Xperia A SO-04E(White)

今年の4月は、スマートフォンの新製品がほとんど発売されなかったこともあって、市場はやや盛り上がらなかった。しかし5月は一転して新製品の発売、旧機種の値下げ、学生とその家族を対象とした学割キャンペーンの駆込み需要などが重なり、活況を呈した。スマートフォンの販売台数は、前年同月比126.6%と前年を上回り、5月としては過去最大を記録した。原動力は、ドコモの「Xperia A SO-04E」「GALAXY S4 SC-04E」、auの「HTC J butterfly HTL21」などのAndroid搭載スマートフォンと、発売から半年以上たった今も売れ続ける「iPhone 5」だ。

●ドコモの夏モデル「Xperia A SO-04E」が売れ行き好調、ロングセラーの兆し

家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、2013年5月の携帯電話全体の販売台数1位は、ドコモの「Xperia A SO-04E」だった。シェアは11.5%。販売台数は発売日を含む5月第2週(5月13~19日)よりも5月第3週(5月20~26日)、5月第4週(5月27日~6月2日)、6月第1週(6月3~9日)のほうが多く、特に5月第3・4週は2位以下を大きく引き離し、突出していた。

ただし、通常はキャリア・容量ごとに別々にカウントしている「iPhone 5」をキャリアごとにまとめると、ソフトバンクモバイルの「iPhone 5」がシェア15.8%で1位に浮上し、「Xperia A SO-04E」は、auの「iPhone 5」(12.5%)に続き、3番手に後退する。月半ばの5月17日発売だったために、月単位では「iPhone 5」を超えることはできなかった。週単位では、5月第2週以降、ソフトバンクモバイルの「iPhone 5」、auの「iPhone 5」を抜き、5週連続でトップに立ち、ロングセラーの兆しをみせている。5月以降に発売された最新機種のなかでは、No.1の人気だ。

いまや携帯電話全体の販売台数の8割前後を占め、完全に主流となったスマートフォン。スマートフォンだけのキャリア別販売台数シェアは、ドコモが45.3%(前月比4.2ポイント増)、auが29.4%(2.7ポイント減)、ソフトバンクモバイルが23.2%(0.8ポイント減)。3キャリアとも、低調だった前月より販売台数は増加し、なかでもドコモは前月比約1.4倍と、かなり伸びた。夏モデルのうち、「ツートップ」に位置づけた「GALAXY S4 SC-04E」と「Xperia A SO-04E」の2機種を特別価格で提供するという新たな戦略の効果が出たようだ。

●ドコモはツートップの2機種、auとソフトバンクでは「iPhone 5」が人気

続いて、主要3キャリア、ドコモ・au・ソフトバンクモバイルのキャリア別月間トップ10を紹介しよう。ドコモは、2013年2月以来、3か月連続で1位を獲得していた「Xperia Z SO-02E」が3位に落ち、代わりに「Xperia A SO-04E」と「GALAXY S4 SC-04E」が1・2位に並んだ。

約5インチのフルHDディスプレイを搭載した「Xperia Z SO-02E」は、すでに生産を終了。約4.6インチのHDディスプレイを搭載した同じソニーモバイルコミュニケーションズ製の「Xperia A SO-04E」とは、画面サイズや防水性能が異なるので併売しても競合しなかったと思われるが、5インチ以上のフルHDディスプレイを搭載した夏モデル「GALAXY S4 SC-04E」「ARROWS NX F-06E」と競合するため、早々に打ち切ったと推測される。

auとソフトバンクモバイルは、前月までと同じ「iPhone 5」がトップ。容量を合算した「iPhone 5」のシェアは前月から上昇して、auは45.1%、ソフトバンクモバイルは63.5%に達した。auは、2012年秋冬モデルの「HTC J butterfly HTL21」「Xperia VL SOL21」に続き、約5インチのフルHDディスプレイを搭載した5月25日発売の夏モデル「Xperia UL SOL22」が4位にランクインした。一方、ソフトバンクモバイルは、ドコモの「らくらくスマートフォン」と同じコンセプトのシニア向けスマートフォン「シンプルスマホ SoftBank 204SH」が4位に入った以外、順位に動きはなかった。

●日本で最も売れたスマートフォンは「iPhone 4S」から「iPhone 5」へ

日本でのiPhone人気は底堅い。現行の「iPhone 5」は、2012年9月21日の発売から8か月ほどたった6月2日に前機種「iPhone 4S」の累計販売台数を抜き、「日本で最も多く売れたスマートフォン」となった。6月16日までの累計販売台数1位は「iPhone 5」、2位は「iPhone 4S」、3位は「iPhone 4」で、累計販売台数はモデルチェンジのたび増えている。Android搭載スマートフォンは、機種数が多いうえに全般的にモデルチェンジのスパンが短く、累計ではiPhoneシリーズに及ばない。

ドコモが新たに「ツートップ」戦略を打ち出し、実際にその2機種が発売になった後も、「キャリアはドコモ、端末はiPhoneが人気」という状況にそれほど大きな変化は生じていない。6月から7月にかけて、各キャリアから夏モデルが順次発売になる。端末価格の安さとブランド力を強みに「Xperia A SO-04E」がますます人気を集めるのか、他の機種が盛り返すのか。アップルが先日公開した新OS「iOS 7」のリリース時期から、少なくとも秋まではモデルチェンジはないとみられる「iPhone 5」を含め、今後の動向に注目したい。(BCN・嵯峨野 芙美)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。