――それは「バンドサウンド」ではないってことですか?

市川:いやいや。一応見た目はバンド編成なんだけども、世間一般の人々が思う「いわゆるバンド」ではなかったことが幸いした、と。そもそもバンドって、一番時代遅れでカッコ悪いものと、若い世代には見なされてるでしょ?

先日、鬼龍院(翔)とエアバンド論になったとき、「日本でも海外でも口パクやってる人たちは多いわけで、だったらエアバンドだって似たようなもの」と言ったんですよ。なるほどな、と。そう考えれば、DJブースで皿回すフリしながら別にトラックを流してラップやってるのと、構造的には同じわけで。そうか、ゴールデンボンバーは新型のヒップホップだったのかと納得しました。ははは。

――あはははは。

 

ヴィジュアル系エアーバンド、ゴールデンボンバーは今年の5月から始まった47都道府県を周る全国ツアーも全公演ソールドアウト。名実ともに大ブレイク中。トラックを流してのパフォーマンスはある意味ヒップホップに近い?

 

市川:それがたまたまバンドスタイル、みたいな。加えてコントだの小芝居だの、お笑い要素もあり。結局、今の若い世代が慣れ親しんでいるテレビ的文化の合体形が、ゴールデンボンバーなんじゃないかなぁ。
 

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ただ個人的に興味深かったのは――『日経エンタ』で全員インタヴューをしたんだけども、やたら歌広場(淳)がとにかく一所懸命、V系論を喋りたがるのね。そのV系LOVEっぷりが妙に微笑ましかったんだけども、「V系ってなんでもできるジャンルじゃないですか!」と力説するのよ。でも私からすれば、「いやいやV系ほど様式美に命賭けてるジャンルはないぜ?」と思っちゃうわけ。

――逆に言えば、その様式の中だったら何をやっても良いという考え方なのでは。極端なことを言ってしまえば、ヴィジュアル系という様式美を守っていれば演奏をしてなくても良いというか。

市川:うん。歌広場の言ってることはそういうことなんだろうね。「V系は世界で一番自由な音楽ジャンル」とまで言ってたから。かつてのV系バンドは、誰もそんなことを考えてなかったよね。たしかに音楽的には、パンクもメタルも歌謡曲もプログレもテクノもクラシックも、と貪欲な雑食性を誇ってて「なんでもあり」ではあったんだけど、様式美という基本は外せなかった。00年代前半に台頭した次世代V系バンドたちが、LUNA SEA的な楽曲構造だらけだったのもある意味様式美だったわけだし。だからスタイルを踏襲して踏襲して踏襲して、やがて消滅する運命のジャンルだなあ、と。そのV系の現役である歌広場が一番自由な音楽スタイルだと言うんだから、浮世って面白いよねぇ……。

――今の世代のヴィジュアル系バンドは、歌広場さんのような考え方の人が少なくないと思います。

市川:ねえ? つまりこれはV系というものに対しての、世代間の決定的な捉え方の違いですよ。かつてのV系は全てにおいて、どこまでも極めなければならなかった。演奏は当然上手くなくてはいけないし、速く弾かなくちゃいけない叩かなきゃいけない。音は沢山詰まってれば詰まってるほど偉いし――とにかく「精進」しなきゃいけないことだらけだったわけだ。そしてその精進の道こそがV系そのものだと、前の世代の連中は全員信じていたわけ。

ところが、今の世代は、その「精進」に対して意味を感じなかったんだろうなぁ。いくら精進しても先達は決して超えられないわけで、後続にとっては最初から負けが見えてる損な勝負だもんねぇ?

――すでに絶対到達できない神レベルの人が何人もいる状態ですからね。

市川:たしかにYOSHIKIやHIDEには到達できないわなぁ、いろんな意味で(苦笑)。だから世代の人たちは、ある瞬間から「精進」を放棄したんだな、きっと。でもって「何やってもいい場所」として発想を転換させた……いやいや、そうじゃないな。自然にそう思ったんだろうね。そういう意味では、もしかしたらV系は新しくなったのかもしれない。

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