宮崎駿監督

宮崎駿監督の5年ぶりとなる長編最新作『風立ちぬ』の完成報告会見が24日、東京・小金井市のスタジオジブリで行われ、宮崎監督をはじめ、主人公・堀越二郎役で主演に大抜てきされた庵野秀明、主題歌「ひこうき雲」を提供した松任谷由実が出席した。宮崎監督は「この5年間は大変で、スタッフも手のかかるシーンを丁寧によくやってくれた。本当にやって良かった」と達成感たっぷりの様子だった。

その他の写真

本作は宮崎監督が模型雑誌「月刊モデルグラフィックス」で連載していた漫画を基に、零式艦上戦闘機(ゼロ戦)の設計を手がけた航空技術者・堀越二郎の半生を軸に、映画オリジナルとなるヒロイン菜穂子との恋模様を描く。宮崎監督自身も「自分の作品で初めて泣いた。不思議な縁と長い積み重ねが、幸運に恵まれて一本の映画になった。だから不覚にも涙が出たのかなあ」としんみり。一方、庵野は「宮さんは人前で泣く人じゃない。だから、映画を一緒に観て『宮さんも泣くんだ』って驚いた」と明かしていた。

その庵野は、声優として“主演”を務めあげるも「恥ずかしいです」と一言。「自分の声は嫌いだし、役者や声優ではないので、役作りは無理。これまでの経験を頼りに、“素”のままでマイクに向かった」といい、「マイクの前に立つ人の気持ちがよく分かったので、次から(監督として)気をつけたい」と笑いを誘った。今回の抜てきを宮崎監督は「庵野は今という時代を、一番傷つきながら正直に生きている。アフレコをやっているうちに、どんどん緊張も解れていき、自然と堀越二郎になっていた。庵野にやってもらって良かった」と手応えを示した。

本作の感想を求められた庵野は「72歳でよくこれを作れるなって…。基本、地に足ついた作品で、宮さんがちょっと大人になっている。今までの作品は、ちょっと地面から浮いた感じだったので」。宮崎監督は「歳で判断するなよ」と笑いながら、「でもまあ、ありがとうございます」と“後輩”の言葉にしっかり頷いた。

松任谷がジブリ作品へ楽曲提供するのは『魔女の宅急便』(89)以来、24年ぶり。昨年12月に開催された同作のブルーレイ発売記念イベントで、鈴木敏夫プロデューサーから直接オファーを受けたそうで「たくさんの人がいる前だから、驚いた。でも、素晴らしい作品に関わることができてうれしいですね」とニッコリ。映画を見て「本当に感動し、我慢していたが嗚咽してしまった」と感激しきりだった。

『風立ちぬ』は7月20日(土)から全国で公開。

『風立ちぬ』
7月20日(土)全国ロードショー