――本作は原作が小説で、さらに2008年にも一度舞台化されています。

久保田「原作がある舞台はミュージカル『テニスの王子様』もそうでしたが、キャラクター作りがしやすいんですよ。お手本があるわけですから。ただ、それにとらわれすぎると、自分の持ち味が出なくなってしまうので難しいところです。なので、前回の舞台のDVDも今はまだ観ていないんです。観てしまうと前回の印象にとらわれそうなので」

――久保田さんが演じることで八雲はどんなキャラクターになるのでしょうか。

久保田「これもまだ稽古に入っていないので何ともいえないのですが、八雲はクールだと思われているキャラクターなので、そこを取っ払っていかにダサく演じるかに挑戦したいですね。やる気のない日常と、事件になってから目つきが一気に変わるギャップを表現していきたいです。こういう八雲もあるんだと思ってもらえたら嬉しいですね」
 

――久保田さんは普段から役に入り込んで役作りするタイプなのでしょうか。

久保田「いえ、普段は単なる久保田秀敏ですよ(笑)。演技で役作りするときには、私生活からその人になりきる方もいれば、オンオフの区別をつける方もいて、僕は後者なんです。オンとオフを分けて、そこで八雲という人間と久保田秀敏という人間との差を見つけて、それをうまく役に落としこんでいきたいですね」

――ご自身の俳優としての強みはどこにあると考えていますか。

久保田「好奇心旺盛なところでしょうか。何でもすぐ興味を持ってやるタイプなんです。最近だと舞台を見たり、好きなアーティストさんのライブに行ったり、あとは美術館で絵画を鑑賞したり」
 

――美術館ですか。

久保田「先日はラファエロ展に行ったのですが、役者とは関係ないものを見て感性を磨くのが大事だと思うんです。本物と言われるものを見てインスピレーションを得ることで、役者としても成長したいですね」

――本物はやはり違うと。

久保田「正直、僕も絵や芸術ってよくわからないんです。でも本物はやはり違うと感じますし、見ていると吸い込まれそうになります。描いた人がこの絵で何を伝えたかったのか、自分の中で解釈を広げていくことが役者としての栄養になると思っています」