村田諒太(写真左)と、柴田明雄(写真右) 村田諒太(写真左)と、柴田明雄(写真右)

7月3日、村田諒太のプロデビュー戦発表記者会見が開催された。ロンドン五輪ボクシングミドル級金メダリストの初陣の相手は、強敵であるOPBF東洋太平洋ミドル級王者にして、日本スーパーウェルター級王者の柴田明雄。73kg契約・6ラウンドとは言え、世界一強いアマチュアボクサーが、未知のリングで現役チャンピオンと闘う事になった。

村田が「(ミドル級で)日本一強い選手とデビュー戦で戦えるのは光栄だし、生意気なこと。素晴らしい王者、素晴らしい先輩である柴田選手に挑戦する人間として、恥じないだけの練習、試合をしたい」と語れば、柴田も「(昨年5月に)村田選手とスパーリングをしてボコボコにされたので、僕の方が挑戦する気持ちです」と言う。ともに、対戦相手に敬意を表した。

リスペクトの念を抱いているからと言って、勝利を譲る気はさらさらない。「日本一の相手だが、僕ならば勝てると踏んで陣営は試合を組んでくれたと思う。KOするとか、判定で勝つとか言えないけれど、全力を尽くす」(村田)。「苦戦続きながら何とか勝ってきた。強くなった姿を見せたい。もちろん、勝ちに行く」(柴田)と、勝負に対する意気込みを語った。

6月に米国大手のトップランク社と契約した村田は、約3週間に渡ってアマチュアからプロ仕様へのモデルチェンジのため、米国でトレーニングを積んできた。7月中旬に再渡米し、デビュー戦に備える。村田は同じボクシングでも、アマとプロのリングが異なることを知っている。「スパーリングで7ラウンド戦ったが、試合とはまた別。走りから3分3ラウンドの時とはトレーニング方法が違う。プロではもみ合いがあるので、体力負けしないように体も大きくなった。プロとしていかに強いパンチを当てるか。強いワンパンチを当てるための戦略、バランスが重要」とプロデビューに向けての対策を語った。さらに、村田は王者の実力を「距離を取るのがうまく、ロングレンジのパンチも持っている。足さばきもあり、後半戦に強い選手」と評した。

対する柴田もデビュー前の村田の総合力を認めている。「アマの時はガードを固めてボディ打ちのイメージがあるが、体も強く、スピードもある。(昨年5月のスパーリング時は)全体的に僕よりもレベルの上の選手。自分のボクシングをさせてもらえなかった」と語る。

村田も柴田も、今回の一戦が決して容易ではないことを知っている。そして、難しい試合だが、負ければ失うものも大きいことを予測しているだろう。負ければ「金メダリストも所詮はアマ、プロのリングは違う」などという声や、「現役王者がデビュー戦の相手に負けるなんて情けない」という声など、外野は好き放題に言うはずだ。金メダリストにとっても、チャンピオンにとっても、ハイリスクハイリターンの戦いである。だが、リスクが大きければ大きいほど、観る者を魅了するのも確か。観客はヒリヒリする戦いを求めている。村田諒太×柴田明雄は8月25日(日)に東京・有明コロシアムでゴング。チケットなどの詳細は近日決定。