今期の連ドラの視聴率を事前に予想できた人は、ほとんどいなかったんじゃないだろうか。自分も初回を見た段階で『家政婦のミタ』はかなり面白いと思った。だからこの研究レポートの第1回でも取り上げた。でも、まさか第8話で29.6%(関東地区)まで上げるとは思っていなかった。第8話ではミタ(松嶋菜々子)の過去が一気に語られたわけだけど、その内容も予想以上だった。子供を亡くしているだろうということは想像できたけど、あそこまでとは……。

こうなると第9話はついに30%超えか!という期待もあった。でも、実際はやや下げて27.6%。やはり、流れとしてはミタの過去がひとつのピークだったか……。ただ、阿須田家の再生が一区切りして、あとはミタの救済に阿須田家がどう関わっていくのか、という終盤に描かれるであろう部分は、さらに見応えが出てくると思う。ミタにとっての救いとは何なのか。愛する人の死や自分の運命に折り合いをつけ、前に進むというのはどういうことなのか。震災後に作られたこのドラマで、脚本の遊川和彦が本当に描きたいと思っていたことは、むしろここから色濃く出てくると思う。

これまでウザい登場人物でしかなかったうらら(相武紗季)にも、やっと存在意義が出てきそうな感じだ。阿須田家の子供たちも、最初の頃から比べるとかなりテイストに慣れてきたようなので、子供たちとミタのシーンも期待できる。続編や映画は作らないと遊川和彦が明言したらしいし、このドラマは最後までじっくりと見届けたいと思う。

さて、そこで今期、少なくとも視聴率だけは取るだろうと思われていた『南極大陸』の話だ。初回の22.2%から第5話で13.2%まで落としたあと、第6話では19.1%とやや復活。でもこれは、直前までプロ野球の日本シリーズ最終戦を放送していて(10時15分まで)、そこからCMなしで『南極大陸』につなげるというイレギュラー編成をしての結果だった。結局、第7話ではまた13.4%に落とし、前週のボーナスから新たに視聴者を獲得するまでには至らなかった。

ただ、第一次南極越冬隊が帰国した第8話では、自力で15%に上げ、浮上の兆しは見せている。実際、舞台が国内になると話にメリハリがつくので、多少は見やすくなっていた。南極に取り残された犬たちも頑張って演技していたし、芦田愛菜の出演時間も増えた。まあ、本来は南極観測隊だけでもドラマにしないといけないんだけど、そこまで内容が充実していなかったので前半の低迷は致し方ないと思う。

もともと日本の南極観測隊の歴史と第一次越冬隊に同行した犬たちの話は、映画『南極物語』で多くの人がすでに知っている。このドラマは実際に第一次越冬隊に参加した北村泰一の『南極越冬隊タロジロの真実』を原案にしたオリジナルの作品で、映画とは関係ないんだけど、やはりエピソードが有名なだけに、どうしてもプラスアルファを期待してしまう。そこを制作側が木村拓哉主演だけでOKとしてしまった感じがして、もったいなかった。せっかくの豪華キャスト陣も活かしきれてないと思うし……。もう少し脚本を練って欲しかったなあ。

   

 

 

 



『南極越冬隊タロジロの真実』
北村泰一/著
小学館文庫 620円
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ところで、この10〜12月期が始まる前は、日曜9時対決もひとつの話題だった。ただ、『南極大陸』の相手となったフジテレビの『僕とスターの99日』も、ここまで最高が第4話の10.4%、7話では7.8%まで下げるなど、やはり苦戦している。

TBSの日曜9時枠は、かつて「東芝日曜劇場」と呼ばれていた1956年スタートの伝統のドラマ枠。1993年に一話完結から連ドラへと変更になり、木村拓哉と常盤貴子が共演した『ビューティフルライフ』、同じく木村拓哉主演の『GOOD LUCK!!』、続編も作られた『JIN-仁-』など、数々のヒット作を生み出してきた。その同じ時間帯に、フジテレビが31年振りにドラマを復活させて作ったのが「ドラマチック・サンデー」という枠だ。つまり、2010年10~12月期以降、TBSとフジテレビは日曜9時でドラマ対決をしている。

ただ、「ドラマチック・サンデー」には、枠に個性がないというか、新しさがないというか、なぜわざわざここにぶつけてきたのかよく分からない状態が最初から続いていた。ところが、勝負にならないと思われていた『JIN-仁-』の第2シリーズの裏で『マルモのおきて』が善戦。『JIN-仁-』が終了した翌週に放送された最終回では、なんと23.9%という高視聴率まで記録したのだ。

その枠に今期は『天国の階段』や『アイリス』で有名な韓流スター、キム・テヒを迎えるということで注目されたわけだけど……。ご存知のようにフジテレビの韓流偏向放送に対するデモなどが重なり、完全に逆風。キム・テヒが竹島(韓国では独島)の領土を主張する「独島愛キャペーン」に参加していたと報道されたり、『僕とスターの99日』の初回、地球儀がアップになるシーンで竹島と日本海の文字がハッキリ映ったことで今度は韓国で批判されたりと、とにかくドラマの内容とは別の話題で盛り上がる結果となってしまった。

まあ、実際、こちらも豪華なキャストを活かしきれてない仕上がりではあるので、内容で盛り上がるのも難しい状態なんだけど……。ただ、スピッツが原田真二の『タイム・トラベル』をカバーした主題歌はいい。やっぱりこの曲は名曲だなあ。スピッツの公式サイトによるとシングルCDを発売する予定はないらしいので、この主題歌はぜひオンエアで確かめて欲しい。


 

 『家政婦のミタ』の予想以上のヒットで、日曜9時対決もかなり薄れ気味ではある。でも、『南極大陸』はゴールデン・プライムタイムの連ドラの中で、まだ平均の視聴率は2位だ。終盤はさすがに盛り上がると思うので、どこまで浮上できるのか楽しみにしたい。 

たなか・まこと  フリーライター。ドラマ好き。某情報誌で、約10年間ドラマのコラムを連載していた。ドラマに関しては、『あぶない刑事20年SCRAPBOOK(日本テレビ)』『筒井康隆の仕事大研究(洋泉社)』などでも執筆している。一番好きなドラマは、山田太一の『男たちの旅路』。