「Xperia A SO-04E」はドコモ夏モデルのなかでダントツの売れ行き

MNP(携帯電話番号ポータビリティ)によるユーザーの流出が続くドコモは、販売促進策として、2013年夏モデルとして発表したスマートフォンのうち、「ツートップ」と位置づけた「GALAXY S4 SC-04E」と「Xperia A(エース) SO-04E」の2機種を特別価格で提供する方針を打ち出し、大々的に宣伝している。もくろみ通り2機種ともヒットし、特に防水・防塵に対応する「Xperia A SO-04E」は6月末時点で累計83万台を売り上げ、ドコモのスマートフォンでは過去最高の販売ペースという。

しかし、端末の好調な売れ行きとは裏腹に、6月の各キャリアの純増数(新規契約から解約を引いた数)とMNPによる転入/転出数を比較すると、ドコモは劣勢だ。もともとの契約数が多いとはいえ、MNPによる転出超過は止まらず、6月の純増数は前月の9万1800件から一転、5900件のマイナス(純減)となった。純減は今年1月以来5か月ぶり。「どの機種を選んでいいのかわからない」と悩むスマートフォン初心者向けに、おすすめ機種を定めて買いやすくするドコモの「ツートップ」戦略は、今のところ既存のドコモユーザーに機種変更をうながすだけの効果にとどまっているようだ。また、「Xperia A SO-04E」と「GALAXY S4 SC-04E」の販売台数の差から、スペックよりも端末の価格が売れ行きを左右する実態が改めて浮き彫りになった。iPhoneのロングセラーは、次々と展開されるキャンペーンや、モデルチェンジが近づくと増える「MNP一括0円」といった安さが支えているともいえる。

●「Xperia A」がシェア16.3%でトップ ソフトバンクの「iPhone 5」を抜く

家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、2013年6月の携帯電話全体の販売台数1位は、ドコモのAndroid搭載スマートフォン「Xperia A SO-04E」だった。週次集計では、5月第2週(2013年5月13~19日)から6月第3週(6月17~6月23日)まで、6週にわたって1位を獲得。月次集計でも、2位に5ポイント以上の差をつけ、前月に続いて2か月連続でトップに立った。

通常はキャリア・容量ごとに別々にカウントしている「iPhone 5」について、キャリアごとに容量を合算すると、ソフトバンクモバイルの「iPhone 5」は、12年9月から13年5月まで9か月連続で1位を獲得していたが、6月は1.5ポイント差で「Xperia A SO-04E」に抜かれ、2位に後退した。ドコモの「Xperia A SO-04E」(16.3%)、ソフトバンクモバイルの「iPhone 5」(14.8%)、auの「iPhone 5」(14.1%)、ドコモの「GALAXY S4 SC-04E」(8.5%)の上位4機種だけで携帯電話全体の53.7%、スマートフォン全体の64.0%を占め、製品別では2キャリアが販売する「iPhone 5」が最も多く売れている。

ちなみに、6月30日までに発売になったドコモの夏モデルに限って、6月30日までの累計販売台数を集計すると、「Xperia A SO-04E」が6割、「GALAXY S4 SC-04E」が3割弱を占め、「ツートップ」の占有率は8割を超える。この結果をもとに作成した円グラフをみると、「ツートップ」とそれ以外のあまりの差に驚く。

●5インチ以上の大画面モデルが上位にランクイン auは「Xperia UL」が2位に

続いて主要3キャリア、ドコモ・KDDI(au)・ソフトバンクモバイルのキャリア別月間トップ10を紹介しよう。なお、「iPhone 5」は容量を合算して集計している。

ドコモは、1位の「Xperia A SO-04E」、2位の「GALAXY S4 SC-04E」に続き、3位に約5.2インチのフルHD液晶ディスプレイを搭載し、フルセグ(地上デジタル放送)に対応する「ARROWS NX F-06E」がランクインした。4位には、僅差でiモード対応携帯電話「P-01E」が入った。同じパナソニック モバイルコミュニケーションズ製のスマートフォン「ELUGA P P-03E」は17位と低迷しているが、「P-01E」は昨年11月の発売以来、ずっと上位につけている。

auは、前月に続いて「iPhone 5」がトップ。2位は、12年12月から13年5月まで、ずっと2位だった「HTC J butterfly HTL21」から、約5インチのフルHD液晶ディスプレイを搭載した夏モデルの「Xperia UL SOL22」に入れ替わった。「Xperia」シリーズは、ドコモだけでなく、auでも人気を集めている。

ソフトバンクモバイルもauと同じく「iPhone 5」がトップだが、シェアは前月よりやや下がった。それでも59.7%とほぼ6割を占め、iPhone率はauより高い。夏モデルでは、シニア向けの「シンプルスマホ SoftBank 204SH」が4位に、約5インチのフルHD液晶ディスプレイを搭載し、フルセグに対応する「AQUOS PHONE Xx SoftBank 206SH」が7位にランクインした。

●前年割れが続いていたスマートフォン 夏モデルの発売前倒しでプラスに転じる

「BCNランキング」によると、13年1月以降、スマートフォンの販売台数は、4か月連続で前年を下回っていた。1~3月はほぼ前年並みだったが、4月は前年同月比92.8%と、落ち込みがやや大きかった。携帯電話は季節や注目機種の発売時期によって販売台数の変動が大きく、時期的には3月と12月が多く売れる。5月は例年ならモデルチェンジの端境期にあたるが、ドコモが夏モデルとして「Xperia A SO-04E」などを発売したために、スマートフォンの販売台数は前年同月比126.6%となり、5か月ぶりにプラスに転じた。6月は、5月より販売台数は減少したものの、前年同月比147.9%と、前年に比べると大きく伸びた。しかし、夏モデルの発売時期の前倒しによって、昨年は7~8月、一昨年は7月にあったピークを先取りしてしまった感もある。

発売直後に手に入れることにこだわらず、いわゆる「2年縛り」といわれる2年契約の更新時期に合わせて買い替えを検討する人も多いだろう。2年前の2011年夏に、当時の人気機種「GALAXY S II SC-02C」や「Xperia acro SO-02C」「iPhone 4」などのスマートフォンを購入し、ずっと使い続けていた層を取り込もうと、MNPを中心としたユーザー獲得競争はさらにヒートアップしそうだ。(BCN・嵯峨野 芙美)

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