「高コスパの電気圧力鍋」として定番商品になった

家電業界で話題性の高い商品が生まれることの多い調理家電の中でも、ここ数年とくに販売が伸びているカテゴリのひとつが「電気圧力鍋」だ。圧力鍋は、高温・高圧での調理が行えるため、食材によく火が通り、短時間での調理が可能。さらに、コンロの火にかけるのではなく、電気を熱源とすることで、火加減や調理時間をタイマーまかせにできるのが電気圧力鍋の特徴だ。 電気圧力鍋自体は決して新しいジャンルの調理家電ではなく、数十年の歴史がある。なかで、最近よく売れている定番モデルが、シロカが発売したコンパクトサイズの製品だ。同社が電気圧力鍋に参入したのは2015年と後発だが、すでに他のメーカーが占めていた市場でなぜ人気を集めることができたのか。商品企画を担当する商品本部 商品企画部 企画グループ 企画チームの峯村俊之シニアリーダーに聞いた。

「圧力鍋」を、日常で使える道具に

家電業界では数年前から、ロボット掃除機や洗濯乾燥機、食器洗い乾燥機などが「時短家電」として一つのカテゴリを形成している。電気圧力鍋も、いわばこの時短ブームに乗る形でヒット商品となった。峯村氏によると、電気圧力鍋による時短効果には二つの側面があるという。

その一つは、100℃を超える高温で加熱することによる調理時間の短縮で、これは火にかける従来の圧力鍋と共通の効果だ。もう一つが、調理を自動化できるというメリット。先に挙げた通り、電気圧力鍋はマイコン制御で鍋自体が火加減や調理時間を管理してくれるので、調理中のコンロの前につきっきりになる必要がない。その間に別の家事を済ませることができるので、「使える時間を創出する」という時短と同じ効果が得られるのだ。

15年の参入当時、すでに調理の自動化というメリットは謳われていたが、大手家電メーカーの製品は3~4リットルの機種が主流だった。見た目も「鍋」らしいものが多く、時短効果があるといっても、こだわりのある料理好きの人のための道具という域から抜けきれていなかった。

それに対してシロカは、少人数世帯をターゲットとし、少量の料理を簡単に作れることを主眼においた。使うときに棚の奥からわざわざ出してくる「ごちそう作り」のための道具ではなく、キッチンに常に置かれ、毎日活用してもらえる製品とするため、容量は2リットルクラスに抑え、コンパクトな形状とした。他社製品では鍋の地色であるシルバーを外装にしたものが多かったが、あえてカラーリングは赤や白を選択。高圧の調理器具に対する抵抗感をやわらげた。一方で、大手メーカー製品が搭載している時計機能を省くなど、調理に本当に必要な機能に特化してコストを削減。実売で1万円台半ば~後半という低価格を実現した。

これらの工夫により、シロカの製品は後発ながら「シンプルで使いやすい高コスパの電気圧力鍋」という評価を確立。発売から約2年で13万台を超えるヒット商品となった。とくに、調理を自動化できるというメリットについては、使い始めてからより強く実感するユーザーが多いようだ。

峯村氏によると「これがあるおかげで料理が本当に楽になった。すばらしい製品を作ってくれてありがとう」という“ファンレター”が同社に寄せられたこともあるといい、メーカーとしても予想以上の反響に驚いたという。

使いやすさとデザインをさらに磨いた2号機

発売当初は比較的若年の世帯を想定していたが、ユーザー層がシニア世代にも拡大しているのがわかったことから、17年秋に発売した新製品「SP-D121」では、ボタンと文字を大きくするなど、より使いやすいデザインを目指した。また、従来製品では「野菜」「肉類」などと表示していたプリセットメニューも、「肉じゃが」「ポトフ」などより具体的な料理名に変更した。使用時の最高圧力も60キロパスカルから70キロパスカルへと高め、調理時間をさらに短縮している。

また、本体に加えて同社が開発に力を入れているのが、付属品のレシピブックだ。新製品に付属するレシピブックには、電気圧力鍋で作れる59種のレシピを掲載した。

レシピの選定について峯村氏は「見栄えがよくても、普通のスーパーに売っていない材料を使うような料理は載せていない」と説明し、あくまで日常の料理に使える製品であることを強調する。掲載の料理は同社のほとんどの社員が試食しており、「料理研究家だけが監修した難しいものではなく、一般の味覚でおいしいと感じられる料理」で構成したのが特徴という。

本体の外観に関しては持ち運び用のハンドルをなくす代わり、下部に手をかけられるくぼみを設け、いっそうシンプルなデザインにした。最新のシステムキッチンに置いても違和感がない、よい意味で「生活感」をあまり感じさせない印象とした。一方で安全性に関しては従来製品と同様に重視し、ロックピンを引きながらでないとフタが開かない設計を継承。圧力鍋の安全基準では、内部の圧力が規定以下に下がらないとフタが開かない仕様であることが求められているが、同社独自の安全設計としてロックピンを加えている。

玄米炊飯の専用機として使ったり、冷凍肉まんの解凍用として電子レンジの代わりに使ったりと、ユーザー側からも新たな利用シーンが次々と生まれている電気圧力鍋。峯村氏によると、電気圧力鍋の市場は前年比1割増の成長を続けているといい、同社ではさらに幅広い層にメリットを訴求していきたい考えだ。(BCN・日高 彰)

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