事件を乗り越えて結ばれるストーリーを描きたい

――先生の作品では、『スイッチガール!!』で仁香が敵対していた明花やボスザルとも友情を育んでいったり、『圏外プリンセス』でも美人が恋敵の増木と次第にわかりあっていったりしていますよね。

新作『アナログドロップ』でも、亜紅が喧嘩をした不良と仲よくなっていく展開があり、恋愛だけでなく友情のドラマもすごくきっちり描いている印象があるのですが、友情というのは、やはり重視されていらっしゃるのですか?

あいだ:私自身、描いていて楽しいのは、友情やバトル、謎を解いたり潜入したりするシーンなので、自然と入れたくなってしまうんです。そもそも少年漫画をよく読んでいて、『ドラゴンボール』でベジータが仲間になっていくあの流れがものすごく好きだったんです。

それだけに、「もともと仲間だった奴らより、元敵のほうがアガる」ということで、敵対しながらも味方になりそうなそこそこの善意が残っている相手を片っ端から仲間にしようとするところはありますね(笑)。

――少年漫画では、どんな作品がお好きだったんですか?

あいだ:『ドラゴンボール』や『ろくでなしBLUES』、『SLAM DUNK』など、おもに『週刊少年ジャンプ』(集英社)の王道の作品が好きでした。

――『ジャンプ』といえば、以前『スイッチガール!!』で、全編劇画タッチのまさに『ジャンプ』仕様だった回がありましたね。

あいだ:あれは、昔の『ジャンプ』で巻頭を赤黒の2色印刷にしていたのを、「あれって、現在(いま)は、ないんですかね?」と担当さんに話したら、「やろうと思えばできるんですけど、やります?」という話になったので、「やっちゃいましょうか」と、赤黒印刷でやらせてもらいました。朱色のインクを買ってきて墨と混ぜて描いて、初めての経験で面白かったですね。

――少年漫画以外でいうと、どんな作品がお好きだったのでしょうか?

あいだ:私が初めて漫画家を意識したのは、一条ゆかり先生の『有閑倶楽部』ですね。あとは、少女漫画だと浦川まさる先生の『いるかちゃんヨロシク』がすごく好きでした。

――一条先生の『有閑倶楽部』というと、少女漫画ですが恋愛要素はあまり…。

あいだ:ほぼゼロですよね(笑)。浦川先生の作品も恋愛はあるんですけれど、メインの大きな流れに違うものがあり、その中に恋愛を成立させる要素が入っている。そういう何かの事件があってそれを乗り越えていく中でお互いを好きになる…という感じが、すごく好きですね。

――そうすると、いわゆる恋愛至上主義的な作品は、そもそもあまり意識されていらっしゃらない…?

あいだ:そもそも、それは描けないんです。たとえば、40ページを学校の中だけでやりとりするとなると、思考が停止してしまう。『圏外プリンセス』はモテないキャラだったので、できたけれど、モテる女子とかいわゆる普通の女の子を学校で動かすとなると、どうにも嘘っぽくなってしまって何も描けなくなるので、それよりは、事件が起こって乗り越えて…という展開を描きたいなと思うんです。

――『圏外プリンセス』終了後は、ショート作品の『小波ちゃんのささくれ』の連載がありましたよね。最近、ファッション雑誌『MORE』の公式サイトでの連載もスタートしたこちらの作品は、どのように描かれていったのでしょうか?

あいだ:当時、少し体調を崩していて、月2回のページ数が多い連載が厳しかったのと、以前からエッセイやショートをやってみたいと思っていたこともあって、相談して描かせてもらいました。

当初はもう少しエッセイっぽい雰囲気にするつもりだったんですが、『マーガレット』の読者は中高生がメインなので、私自身の心の声でやりすぎるとちょっと違うかなと思って、テンション高めの作品ではなく、もう少し抑え気味なキャラクターにしてみようかというところでやってみたんですが、とても楽しかったですね。

――主人公の小波ちゃんは、タイトル通り、あれこれ気にしすぎて心にささくれを作っているような女の子ですよね。

あいだ:小波はすごく私に近いんです。私自身、あそこまで静かなタイプではないんですが、自意識過剰すぎるところがあって、「今、あの人、私のことこう思っているんじゃないかな」とかめちゃくちゃ考えてしまう。

「迷惑をかけないように」って考えすぎて空回りして、結局、相手は何も気にしていなくてずっこける…みたいなことも多くて、その話を担当さんにしたら「わかるわかる」という話になり、ちょっと面倒くさい女の子の話になっていったんです。