内面ブスは雰囲気を乱したり、嫌な飲み方をする人

うーん……美人とブスの違いについて、マスターからなんとか言葉を引き出したい。そう思った筆者はこんな問いを投げかけてみました。

――見た目は美人だけど、中身はブスな人っていませんか?

「それはいるよね。たとえば、いくら美人だったとしても、ここに来て騒いだり他のお客さんに迷惑をかけたり、嫌な飲み方をする人は、中身まで美人だとは思えないよ。

逆に、美人のなかの美人は、感じがいい人だよね。雰囲気がいい人、というか。他のお客さんとも気持ちよく会話したり、その場にいい感じに溶け込んだりね」(マスター)

高田馬場の地で51年、夜の店を続けてきたマスターの言葉はシンプルながら、深みがあります。

高校卒業後、百貨店に入社して呉服部に配属され、着物を売る仕事をしていたマスターは、勤続7年目に会社が倒産してしまったのだそう。

無職の期間に知り合いと飲みに行った際、たまたまテナントが空いていたことから、3カ月後には自分でバーをオープンしていた、という話は驚きしかありません。行動力とエネルギーにあふれすぎていてすごい……!

「バーの営業なんて当然未経験だし、経営に携わったこともないけど、店を持つことになったんだよね。でも、バーやお酒の知識がまっさらだったからこそ、素人なりに工夫して、50年以上も続けてこられたのかもね」(マスター)

25歳のときに自分の店を持つようになってから、毎晩営業終了後には他の店へ飲みに行き、お酒の作り方を教えてもらっていたと言います。

「あなたは美人」と言ってもらえる非日常

マスターの歩んできた道までお話を伺えて満足しました。さて、会計をしてもらいます。「ごちそうさまです。お会計お願いします」と伝える筆者に、マスターとシゲさんは「半額ね」と返してくれました。

BAR信の中では、筆者は美人として扱われました(笑)。「仕組みをわかっているけどなんか嬉しいですね。現実世界で、美人って言われる機会はないですから。えへへ」と笑う筆者に、「あなたは美人だよ」とマスターは最後の最後まで優しかったのでした。

ちなみに、女性=美人=半額になるケースは、女性だけで来店した場合に限られます。女性ひとりまたは女性の友人同士で来店すると半額になります。

メニュー表にある「珍からあげ」「珍たこ焼き」などはレンジでチンして出すものだそう(マスター談)ですが、「そば粉焼」など凝ったメニューもあります。マスターもシゲさんも気さくで、常連さんとも笑いあふれる会話ができるBAR信、一度訪れてみては?

取材協力/BAR信

フリー編集者・ライター。岡山県出身。中央大学法学部卒業後、楽天、リアルワールドを経てフリー編集者/ライターに。関心のあるテーマは女性の生き方や働き方、性、日本の家族制度など。結婚・離婚を一度経験。11月14日に『はたらく人の結婚しない生き方』を発売。