北条義時役の小栗旬(左)と北条時政役の坂東彌十郎 (C)NHK

 NHKで評放送中の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。10月2日放送の第38回「時を継ぐ者」では、謀反を起こした北条時政が鎌倉を追放され、家族との別れを迎えた。

 これに関して、番組公式twitterおよび公式サイトで放送後に公開している「かまコメ」で、北条家の面々を演じる俳優陣がコメントを発表した。

 追放の当事者となった時政役の坂東彌十郎は、息子・義時との今生の別れのシーンについて、「こっちが一番、迷惑をかけたのに、だから、ある意味、つらいですよ」と語りつつも、「つらいですけど、『ありがとう』『本当にありがとう』という気持ちで、肩に手を置けたかな」と納得の様子。

 とはいえ、2人の最後のシーンで義時が見せた涙については、「僕もどっちかというと涙もろい方なので、僕が一緒に泣かない方がいいと思って、こらえているのがつらかったです」と語った。

 さらに、義時と演じる小栗旬の姿が重なったようで、「僕が映像に慣れていないのを、本当によくフォローしてくださったり、『父上、大丈夫ですよ』って人に分からないように声を掛けてくださったり、というのもありましたから、全てが頭に浮かんできました」とこれまでの撮影を振り返りつつ、「本当に『ありがとう』という、時政としても、彌十郎としても、そういう感じでした」と感謝の気持ちを打ち明けた。

 これに対して、「もうやばかったです。段取りのときから」と前置きした義時役の小栗は、クランクインから1年以上親子を演じてきた彌十郎と最後の共演になった別れのシーンに臨んだときの思いを告白した。

 「今までの父上とのいろいろな関係性の上で、特に何か自分の中で決めてくることはなく、『飛んだ石の行方は石に聞いてくれ』というような感じできたんですけど、培ってきたものと、ためてきたものと、過ごしてきた時間と、それが全部吐き出たかなという感じです」

 さらに、義時としての父・時政に対する思いを、「やっぱり大好きな存在ですよね」と語り、「父は常に私の前にいた」というせりふに関連して、次のように振り返った。

 「一緒に石橋山の戦いで逃げている最中も前に父上がいたし、それから御所関係でいろんなことが始まっても、やっぱり自分の前に時政さんがいるという状況が多かったので、いろいろ学ばせてもらったなと思います」

 また、父・時政を見送るシーンで泣きじゃくっていた義時の弟・時房役の瀬戸康史は「父上が、俺が泣いていることによって、泣けなかったんだと思うんですよね、あのシーンで。本当は父上も泣きたかったのかもしれないけど、時房がすごく泣いているから、だから父上は笑ってくれたんだと思います」とコメント。その上で「父の愛情をすごく感じました」と締めくくった。

 一方、政子役の小池栄子は、父・時政への気持ちについて、「もう一度立ち止まって考えてもらえるようなことを娘としても助言ができたんじゃないかなとか、タラレバの気持ちがたくさんあります」とやや後悔をのぞかせつつも、必死の命乞いが時政の命を救う結果につながったことについては「精いっぱいできることはしたのかもしれないです」と納得している模様。

 さらに小池は、これまで散々時政をたきつけてきた、事の元凶ともいえる義母りく(宮沢りえ)との別れのシーンにも言及した。

 こちらに関しては、「いろんな苦楽を共にしてきたし、許せないこともいっぱいありましたけど、やっぱり悲しかったですね」と複雑な思いをのぞかせつつも、シーン自体には「粋な別れ方だなと思いました」と満足している様子がうかがえた。

 小池と共にりくとの別れのシーンを演じた実衣役の宮澤エマも「どれだけわだかまりがあって、お互いに対していろんな感情を持っていても、あの(頼朝が挙兵したとき、一緒に避難した)伊豆山権現での3人というのが、もしこれだけ政権のいろんな争いに巻き込まれなければ、わりかし和気あいあいと仲よくやっていけた姿というのが、1回はあったので」と語り、「三谷さんはすてきな3人の女性の関係性を書いてくださったなと思いました」と名シーンを生んだ脚本の三谷幸喜を称えた。

(取材・文/井上健一)