『ペーパーボーイ 真夏の引力』で描かれる残酷な青春とは?

2013.7.18 10:21配信
『ペーパーボーイ 真夏の引力』のザック・エフロンとニコール・キッドマン(C)2012 PAPERBOY PRODUCTIONS,INC.

子供時代のルールは単純だ。やりたいことをやる。悪いことをすれば罰を受ける。成長するほどそのルールが複雑化することは言うまでもないが、本作はその一過程をサスペンスフルかつセンセーショナルに描いた力作だ。

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舞台は1969年、フロリダの田舎町。主人公のジャックは酔っぱらってプールの水を抜いたという、何とも子供っぽい理由で大学を退学させられた青年で、もちろん童貞だ。彼にとって、その年の夏は価値観が恐ろしいほど変わる時期となる。新聞記者である兄に付き添い、死刑囚の冤罪疑惑を調べるうちに、その死刑囚の婚約者に心惹かれるばかりか、命の危機に追い込まれることになるのだ。

恋愛やセックス、社会の厳しい現実に直面すると言えば、よくある青春ドラマだが、本作はそれに留まらない。人種差別と殺意、男女関係の複雑、そして歪んだ性欲…ひと夏のうちにこれだけの情報量を受け入れるのは子供には酷なことだ。海でクラゲに刺された彼が、恋しい女性に消毒のために放尿治療されるという、悩ましいエピソードまでついてくる。そのうえ文字どおりの生き残りをも強いられるのだから、この大人への階段はあまりに壮絶だ。『プレシャス』で家庭内暴力・妊娠・エイズというスラムの少女の“凄春”を描いて見せたリー・ダニエルズ監督だが、この新作は、さながらそのボンクラ少年バージョン。今回も精神がズタズタにされ、気が狂わんばかりのアイデンティティの崩壊をリアルに描いてみせた。この才気は、改めて注目するべきだろう。

大人になって思春期を振り返った時、“あの過酷な時期をよく生き延びられたな”と考えることがある。この“青春残酷物語”を目の当たりにして、そんなことを思うのは筆者だけではないだろう。

『ペーパーボーイ 真夏の引力』
7月27日(土)新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー

『ぴあ Movie Special 2013 Summer』(発売中)より
文:相馬学

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