2008年7月の「iPhone 3G」発売から5年。家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、いまや新規に販売された携帯電話の8割前後がスマートフォンになっている。今回は、2年前、2011年夏頃にスマートフォンを購入し、そろそろ買い替えを検討している方向けに、「BCNランキング」をもとに、OSや画面サイズ、カメラの画素数など、スマートフォンの主要スペックの2年間の変化をまとめた。なお、一部のデータについては、過去2年間ではなく、過去3年間のデータをもとに集計している。

●Androidは4.5インチ以上・ハイビジョン対応が主流に

「ディスプレイを指で触って操作する」「アプリを自由にインストールしてカスタマイズする」「パソコンと同じようにインターネットを利用でき、パソコン用のメールアドレスが使える」といった特徴をもつスマートフォン。大きく分けて、iPod touch、iPadと同じiOSを搭載し、モデルチェンジのスパンが長いアップルのiPhoneと、さまざまなメーカーから短いスパンで次々と新モデルが発売されるAndroid搭載スマートフォンに分かれる。防水やワンセグ、おサイフケータイなど、従来型携帯電話(フィーチャーフォン)と同じ機能を求めるなら、選択肢はAndroidに限られる。また、主要3キャリアのうち、現在契約数No.1のドコモだけがiPhoneを取り扱っていない。

こうした機能面の差や取り扱いキャリアの制約もあり、月ごとにOS別販売台数構成比を集計すると、iPhoneの新モデルの発売直後を除き、製品数の多い「Android」が「iOS」を上回る。2011年7月から2013年6月までの累計でも、「Android」が67.9%、「iOS」は31.8%と、およそ2倍の差がついている。GoogleのAndroid、アップルのiOSに続く第3のモバイル端末向けOSとして開発され、今後、国内でも搭載機種が発売される見込みのTizen(タイゼン)やFirefox OSは、こうした状況に割って入ることになる。

2年前の2011年夏は、ソフトバンクモバイルの1社独占販売だった「iPhone 4」や、Android搭載スマートフォンの「GALAXY S II SC-02C」「Xperia acro SO-02C」「MEDIAS WP N-06C」「INFOBAR A01」などが人気を集めていた。当時は、携帯電話全体の販売台数に占めるスマートフォンの割合がようやく5割を突破し、普及に弾みがつき始めた段階で、性能面ではまだ発展途上だった。

Androidに限って画面サイズ帯と解像度ごとの販売台数構成比を集計すると、最も販売台数の多い画面サイズは「4インチ台前半」から、2011年11月に初めて登場した「4インチ台後半」にシフトし、2013年2月以降は「5インチ以上」が2割以上を占めるようになった。約4.6インチのHDディスプレイを搭載した「Xperia A SO-04E」が売れた5月・6月の画面サイズ帯別販売台数構成比は、「4インチ台後半」が40%台後半、「5インチ以上」が30%台前半。以前は多数を占めていた「4インチ台前半」は10%台にとどまり、6月に至ってはわずか13.4%だった。大画面化は、内蔵バッテリの大容量化、画面の見やすさ・操作性の向上、iPhoneとの差異化など、複数の要因が重なった結果だろう。

ディスプレイの大型化とともに、高精細化も進んだ。2011年冬モデルから、1280×720のハイビジョン(HD)に対応する機種が登場し、2012年3月には「HD」が半数以上を占めるようになった。2012年12月には、より高精細な1920×1080の「フルHD」対応機種が発売になり、今やAndroid搭載スマートフォンのほとんどは、「HD」または「フルHD」に対応する。

海外では、スマートフォンとタブレット端末の間を埋める新カテゴリとして、「ファブレット」と呼ばれる画面サイズ5インチ以上7インチ未満の大画面スマートフォンが注目を集めているという。明確な定義は定まっていないが、単純に画面サイズだけで区分すると、「ファブレット」はすでに一定の支持を得ているといえる。

●内蔵メモリは32GB・16GBが標準に もう容量不足で悩まない!

写真・動画や音楽、アプリなどを保存する内蔵メモリ(ROM)と、バッテリの大容量化も進んだ。2011年7月の時点では、最も販売台数の多いメモリ容量は「1GB」で、次に「2GB」と「16GB」が同程度の水準で続いていた。2012年12月の時点でも、最も多い容量は「16GB」、やや離れて「32GB」という状況だったが、2013年6月に初めて入れ替わった。メモリカードスロットを備え、外部メモリに対応するAndroid搭載スマートフォンは、iPhoneに比べると内蔵メモリの容量が少なかったが、2013年夏モデルから32GB・16GBが標準になり、ようやくiPhoneと同程度の水準に追いついた。現時点で最大容量の64GBは、「iPhone 5」の64GBモデルと「ARROWS」シリーズのフラッグシップモデルくらいで、まだ数は少ない。

バッテリ容量はスペック調査の対象外なので、変化をデータで示すことはできない。ただ、最新のAndroid搭載スマートフォンは、概ね2000mAh以上の大容量バッテリを搭載し、高い省エネ性能や独自の節電アプリなどとの相乗効果で、従来よりバッテリが長もちするという。スマートフォンの弱点といわれる「電池もち」の改善に関しては、アップルよりも、シャープや富士通、京セラなどのAndroid陣営のほうが積極的だ。

●カメラも高画素化 「1000万画素以上」が半数を超える

最後に、スマートフォンの主要機能の一つ、カメラの画素数の変化をみよう。メインカメラの画素数帯別販売台数構成比を集計すると、2011年7月は「800~1000万画素未満」が66.9%で最も多く、「iPhone 4」が該当する「530万画素以下」も25.2%を占めていた。しかし2013年6月は、「1000万~1400万画素未満」が48.1%、「iPhone 5」が該当する「800万~1000万画素未満」が43.7%、「1600万画素以上」が4.9%、「530万画素以下」が3.3%となり、全体的に高画素化が進んだ。必ずしも高画素=高画質というわけではないが、スペック上はコンパクトデジタルカメラと遜色がなく、撮影テクニックとセンスがあれば、フォトコンテストに出品できるようなきれいな写真が撮影できるだろう。画素数だけではなく、レンズの明るさや撮像素子の大きさなど、他の要素にこだわる動きも出てきている。

わずか2年の間に、CPUなどの基本性能は大きく向上した。Android搭載スマートフォンはどんどん画面サイズが大きくなり、3.5インチにこだわっていたiPhoneも、最新モデルの「iPhone 5」では4インチに大型化した。画面サイズの大型化はAndroid、内蔵メモリの大容量化はiPhoneがけん引したといっていい。スペック面では、Androidがトレンドをリードする傾向が強まっている。また、2012年秋以降の機種はほぼすべてが高速データ通信サービスに対応し、下り/上りの最大通信速度(理論値)は大幅にアップした。進化のスピードはやや落ち着くかもしれないが、より快適に、より便利に使えるよう、今後もスマートフォンの進化は続いていく。(BCN・嵯峨野 芙美)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。