「くらしカメラAI」で進化する日立のエアコン

最近のエアコンのプレミアム機種には、さまざまなセンサが搭載されている。働きが複雑でブラックボックスの部分も多く、接客時の説明に不安を抱える販売員も少なくない。日立ジョンソンコントロールズ空調(日立)の「ステンレス・クリーン 白くまくん」プレミアムXシリーズに搭載した「くらしカメラAI」について、グローバル製品企画本部 国内RAC製品企画部の木村士良部長に聞いた。

他メーカーが人感センサや日射センサなどを採用するなか、日立の特徴は「画像カメラ」を軸に各種センサを組み合わせている点にある。「くらしカメラ」の初搭載は2013年で、今年で6年目になる技術だ。「デジタルカメラやスマートフォンに搭載された顔認識機能にヒントを得て、エアコンでの採用に踏み切った。リビングには複数の人がいるケースが多いので、カメラで人物そのものを把握する発想で開発した」と、木村部長は振り返る。

最新モデルの「くらしカメラAI」は、「画像カメラ」と2種類の「近赤外線LED」「温度カメラ(温度、湿度センサ)」の4つから構成される。初代の「画像カメラ」から進化の過程を踏まえながらみていこう。

13年の初代の「画像カメラ」は、人物の人数、位置、部屋の間取り、人の動きによる活動量などを認識していた。14年には「温度カメラ」が加わり、人の周囲の温度を検知できるようになった。「画像カメラ」と組み合わせることで、冷やしすぎや暖めすぎといった不快感が抑えられる。

気流の通り道を見つける「くらしカメラ」

「くらしカメラ」が大きく進化したのは、15年に搭載した「ものカメラ」だ。近赤外線LEDで床などの下方向の温度を認識できる。これと「画像カメラ」を組み合わせることで、テーブルや家具、ソファーの位置や形状、脚など気流の通り道が把握できるようになった。「ソファーでも脚があって下に空間があるタイプは気流が抜けるが、下に空間がないタイプは気流が通らない。気流の通り道を見つけて、人の足元や部屋全体を快適にする」と木村部長は語る。

16年は「お部屋カメラ」を搭載。「ものカメラ」が下方向を検知する近赤外線LEDであるのに対し、「お部屋カメラ」は水平や上方向を検知する近赤外線LED。畳やフローリング、カーペットなど床の素材のほか、キッチンの下がり壁、窓の位置や大きさ、吊戸棚まで把握できる。

例えば、夏場はキッチンが最も暑いはずなのに、従来のエアコンは涼しい風が下がり壁にあたって届かなかった。「お部屋カメラ」は、対面キッチンのカウンターと下がり壁の隙間を見つけて涼しい風を届けるのだ。

「人識別技術」まで進化した「くらしカメラAI」

そして17年の「くらしカメラAI」は、30万画素のCMOSイメージセンサでさらに進化した「画像カメラ」が、同時に複数人の着ている服の柄や色合い、髪の色などの違いを識別する。つまり、服の違いからAさん、Bさん、Cさんを認識して、個々の滞在時間を把握。長くいる人の暖めすぎを抑えたり、逆に、新しくDさんが部屋に入ってきた場合、集中的に暖めたりすることができる。この「人識別技術」が、「くらしカメラAI」の最大の特徴になっている。

さらに「くらしカメラAI」は、エアコン内部にある熱交換器をきれいにする「凍結洗浄」とも連携する。例えば、キッチンに近いテーブルでホットプレートを使って焼肉などをしていたら、油汚れが強くなるなどの状況を把握し、「凍結洗浄」の回数を増やしたり、逆に寝室なら頻度を減らしたりしてくれるのだ。

「凍結洗浄」は画期的な技術だが、手動でオン・オフするようでは結局、人は使わなくなる。人の不在や部屋の汚れ具合を予測しながら、知らないうちに洗浄してくれるのも「快適さ」のひとつであり、それを裏で支えている技術が「くらしカメラAI」というわけだ。

あまりにいろいろと検知できるがゆえに、接客時の説明が難しく感じる最近のエアコンだが、顧客がエアコンに求める「コト」をヒアリングしてからアプローチする必要がありそうだ。(BCN・細田 立圭志)

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