水夏希  撮影:源 賀津己 水夏希  撮影:源 賀津己

2010年に宝塚歌劇団を退団後、女優活動だけでなく、歌とダンスで構成するショーの舞台にも意欲的に出演してきた水夏希。毎年催してきた水主演のシリーズも本作で3度目となるが、タイトルを『SHOW Beyond the Door 』と名づけた今回は、主演に加えて自ら構成と演出も担当する初の試みだ。宝塚の興行は芝居とショーの2本立てが基本だが、宝塚を卒業すると女優業一本に絞るOGが多いのも事実。そんななか「“ショー”というスタイルを大切にしていきたい」という水に、本作の内容について聞いた。

水夏希「SHOW Beyond the Door」チケット情報

「ディナーショーなどで演出家に“こんなことをやりたい”と提案したことはありますけど、一から十まで演出を担当するのは今回が初めて。曲や装置、衣裳など考えることがこんなにあるなんて!と、初めはパニックでしたね」と笑う水。

「でも段々と“私は演出家、何をしてもいいのね”という喜びが沸いてきて…今は楽しんでやっています。振り返ると私は荻田(浩一。元宝塚の演出家)先生の作るような、アーティスティックで不思議な感触の、デカダンな香りのするショーが好きなことを思い出しました。それで本作も、前半は次々と扉を開けていくイメージで踊るコンテンポラリーなダンスに。後半は、ミュージカルやジャズなどの曲を使ってザ・エンターテイメントを思わせる華やかなショーに仕上げていこうと思っています」

宝塚で上演されるショーは、先人たちが研究を重ねた上で受け継がれた型があり、それが観客にカタルシスをもたらす。だが日本の演劇界全般を顧みると“ショー”の占める割合はあまりに少なく、その型もないに等しい。「私自身、宝塚のショー以外ほとんど知らないので、今回の構成もどうしようか悩みました。音楽監督と“まずは四角い絵を書く(絵コンテを切る)ところから始めようか”なんて相談しながらコツコツと…。おかげで今まで気づかなかった、スタッフ側の目線に気づけたのはよかったかも(笑)。カッコよく踊れるキャストも揃ったことですし、歌だけでなくダンスでも存分に魅せたいですね」と水は意気込む。

タイトルには「扉の向こうに新しい世界が広がっていることを改めて意識したい」との気持ちを込めたという。「元男役なら誰でもそうだと思うのですが、退団してからのこの3年は“女性の舞台人”として自分がどう進んだらいいのかわからず、落ち込んだこともありました。でもこれからは、自分の全てを背負っていかなくてはいけないのだなって。焦りもありますが、本作を通してようやく覚悟のようなものが出来る気がしています」

宝塚で頂点を極めた水だからこそ、進んでいける道。彼女の想いが舞台上で形となる日を、期待して待ちたい。

公演は9月14(土)・15日(日)東京・品川プリンス ステラボールにて。チケットの一般発売は7月27日(土)午前10時より。

取材・文 佐藤さくら