どのシーンよりも、こんな毒素に満ち溢れたシーンって無いと思うんです

撮影:奥山智明 拡大画像表示


――先ほど『Louis ~艶血のラヴィアンローズ~』のことを「ヴィジュアル系への願いを込めて作った曲」だと仰っていましたが、KAMIJOさん自身「ヴィジュアル系」というシーンにすごくポリシーを持っているように思えます。

KAMIJO:僕からすると、「ヴィジュアル系」とはそもそもジャンルではなく、音楽以外のいろんな表現方法をもったアーティストに与えられる称号だと思っているんです。

最初のバンドLAREINEは'99年にメジャーデビューしました。当時はヴィジュアル系ブームで「ヴィジュアル系四天王」と呼ばれているバンドを筆頭にたくさん素晴らしいバンドがいました。そういった中で僕らLAREINEは一番下っ端で、そのブームの最後にデビューしたんですね。それ以降、あまりシーンが派手に盛り上がっていない時代がありまして、自分がもっと後輩たちに影響を与えていかなくてはいけないなという責任をすごく感じていて。それが自分の糧となったし、パワーとなりました。

自分が引き継いだり生み出したりしてきた価値観、感覚、そういったものをリスナーの方だけじゃなくて、後輩たちにもどんどん引き継いでいけたらなという思いが、自分自身が活動していく上での力になっています。
もちろん僕がこれまでずっと自分のスタイルを変えずにやれているのは、応援してくださるファンの皆様のおかげというのがまず第一にあるのですが。

――「ヴィジュアル系」といっても、色々な方がいますよね。ファンがつきやすいからという理由などでヴィジュアル系シーンに来るバンドもいますし、逆にヴィジュアル系として活動していても途中でシーンから離れていくというケースもありますし。

KAMIJO:ヴィジュアル系って、ハマってしまったら抜け出せない「毒」なんですよね。
最初からヴィジュアル系が好きでやってる人たちっていうのもいますけど、例えば、メタルバンドがメイクをしてヴィジュアル系に参入するということもあるじゃないですか。最初は「(メイクをしたら)人気者になれるかな?」くらいの気持ちでもいいんですよ。どんどん格好良いバンドが出てきてくれれば。でも、絶対抜け出せなくなるんで。それがヴィジュアル系のいいところですね。格好良いミュージシャンを囲えますからね(笑)。一度つけた仮面は外せないという(笑)。
そうやってバンドマンだけじゃなくって、ファンの方々リスナーの方々にも影響を与えてしまって抜け出せなくなるのがヴィジュアル系なので。

ちょっとかっこいいなとか綺麗だなというのを、音楽じゃなくって写真で見て思ってしまったら、それがある意味「目覚め」なんですよ。その時点で音楽にハマるということはわかっているので。
こんな毒素に満ち溢れたシーンって無いと思うんです。メタルよりもパンクよりも、何よりもどんなシーンよりも、毒素に溢れてて……大好きですね。

もちろんそうやって聴いてくれた方々には、毒だけでなくバラ色の人生をおくれるような音楽を提供して行きたい。僕の今回のソロデビューシングル『Louis〜』の「ラヴィアンローズ 艶やかに 君を彩りたい」というサビの歌詞にもあるように聴いてくれた人の人生に添えてあげられる薔薇でありたい。

そして、この楽曲のMVにManaさん(MALICE MIZER・Moi dix Mois)が出演してくださっているんです。Manaさんは僕をこういった薔薇世界といいますか、この世界へ導き入れてくださった張本人なんですよね。そんな恩師であるManaさんにこのMVに出演していただいて、僕がヴィジュアル系に目覚めたその瞬間をMVの中で描いてますので、それを見てMVを見てくださった方も、また目覚めてしまえばいいのになと思っています。
 


KAMIJO:僕にとってのヴィジュアル系を深く追っていくと「耽美派」というところに行き着くんです。ヴィジュアル系の人はみんな結局自分がカッコ良くなりたい、美しくなりたいとか誰よりも派手にやりたいとか、そういった気持ちから生まれるものであって、それこそが僕はヴィジュアル系の精神のルーツだと思っているんです。恩師であるManaさんとも「どうして世の中はこんなに薔薇が似合うバンドが少ないんだろう?」という話をしていて。一緒に革命を起こさなければならないと思ってお誘いし、今回の共演に至ったんです。