lynch.

lynch.

4番手に現れたのはlynch.。2015年にはツーマンツアー「MARCH ON THE DARKNESS」を行い、lynch.が昨年リリースした『SINNERS-EP』のベースレコーディングにYUKKEが参加するなど近年交流が深い両バンド。奇しくもこの日12月27日はlynch.の13回目のバースデイでもあった。

玲央(G)、悠介(G)、晁直(Dr)が登場し、しばらくしてから葉月(Vo)がゆっくりと現れ「lynch.です。よろしくお願いします!」と始まったのは『D.A.R.K.』。そこから本領発揮と言わんばかりに最新曲『CREATURE』を披露。

「今日は(他のバンドの)ファンであるみなさんを根こそぎ奪いに来ました!」と宣戦布告したと思えば、「みなさん好きなバンドいますよね? そのバンドは好きなままで構いません。ただ今日は、今は、僕たちlynch.と浮気してみませんか?」とフロアに火遊びをけしかけ、自分たちのファンに対して「見てみろ大チャンスだぞ! 絶対モノにしてやろうぜ!」と続ける葉月。

トリビュートアルバムでカバーした『茫然自失』ではダイバーが続出、『GALLOWS』ではサークルピットが出現し、『pulse_』では「頭飛ばせ!」の煽りにヘッドバンギングで応えるフロア。ラストナンバー『EVOKE』の前には、目標であった武道館ワンマンを改装前に行うことが不可能になってしまった彼らが来たるその日のために「行くぞ武道館!」という言葉を取っておきたいと語った。

冒頭のMCでもあったように、lynch.とは、lynch.と彼らのファンがお互いを求め合い作る共犯関係であると、この日のライブを見て感じた。その共犯関係は様々なものを巻き込み、日に日に大きくなっていく。葉月の口から「行くぞ武道館!」の言葉を聞ける日が来るのもそう遠くないと感じた。(O)

THE BACK HORN

THE BACK HORN

5番手として迎えられたのはTHE BACK HORN。山田将司(Vo)がMUCCのメンバーと同い年で同郷という縁もあり、お互いの主催イベントに参加するなどジャンルの垣根を越えた交流のある両バンド。

山田の「こんにちは、THE BACK HORNです。」の挨拶もそこそこにライブは『刃』からスタート。いきなりのキラーチューンに会場はモッシュの嵐となる。勢いはそのまま『シンフォニア』へ。岡峰光舟(B)のベースソロでは歓声があがり、続く名曲『美しい名前』では張りつめた静寂に響く山田の歌にただただ圧倒されることしかできなかった。

「俺たちも同世代として、これからもMUCCにちょっとでも刺激を与えられるようなバンドでいたいですし、同世代だからこそMUCCにこれからもずっとずっと輝いていてほしいと思います。そして、MUCCにしかできない音楽を突き詰めていってください。」と松田晋二(Dr)が述べ、ゲストボーカルとして呼び込まれたのは逹瑯。もちろん披露されたのはトリビュートアルバムに収録されている『最終列車』。自分の歌なのに緊張すると言っていた逹瑯だが、山田との力強いツインボーカルは贅沢なひとときだった。

ライブのラストを飾ったのは、脳内で興奮物質が勢いよく放出される菅波栄純(G)の必殺リフから始まる『コバルトブルー』。会場からはこの日一番の歓声があがり、フロアではダイバーが人の上を転がり、大きな盛り上がりを見せた。

同世代で同郷という縁によって出会ったMUCCとTHE BACK HORNがこうやって刺激しあえる間柄であるというのは、この両バンドがジャンルを取り払い共鳴しあうからだと感じたし、これからこの先も切磋琢磨しあえる両バンドでいてほしいと願う。(O)

THE BACK HORN・山田将司/MUCC・逹瑯

sukekiyo

sukekiyo・京

続いてはDIR EN GREYの京(Vo)率いる異能の音楽集団、sukekiyoだ。匠(G/piano)、UTA(G)、YUCHI(B)、未架(Dr)によるサウンドチェックというよりはひとつのセッションのような音の渦が巻き起こっている。この段階で「一体何が起こるんだろう」と目が離せない。

そして、京がステージに姿をあらわす。1曲目の『leather field』からすでに完璧なsukekiyoの世界を構築し、観客は息をのみ、耳を澄ますことしかできない。時に電子パーカッション、サンプラーなどを駆使する予測不可能なサウンドで武道館が侵食されていく。

どこか土着的なリズムがホラー映画のようにじわじわとフロアを締めあげていった『死霊のアリアナ』。そしてもはや一聴しただけではそれとはわからないほどに形を変えたMUCCの『ガーベラ』では、不穏なノイズと不協和音が武道館に広がる中、糸が切れた人形のように崩れ落ちる京。観客が固唾を飲んで見守る中、再びゆらりと起き上がり、自由自在に己の声を操っていく。

後半はメロウな『艶』で魅了し、セクシャルで物悲しい『anima』と、sukekiyoの持つ美しくドラマティックなメロディを堪能し、そして最後の『嬲り』を演奏し終えると京の「おやすみ」という言葉と共にマイクが「ゴトン」と落とされる。その音を終演の合図にするかのように、観客はハッと我に返り拍手を始める。最初から最後まで圧倒的というほかない異形のパフォーマンスが強く印象に残った。(F)

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