3Dプリンタ「CellP 3Dプリンタ」

PCからプリンタにデータを出力すると、何もないところから立体物ができあがる夢のような機械「3Dプリンタ」が、いま、話題になっている。もともと部品の試作品制作などに使われる業務用の機器で、価格が高く、目にする機会も少なかったが、最近、一般家庭向けの低価格モデルが登場したことで、火が着いた格好だ。しかし、そもそも3Dプリンタとはどのようなものなのだろうか。8月1日、ビックカメラ赤坂見附店で「3Dプリンタ体験イベント」が催されたので、早速突撃取材を敢行した。

イベントでは、ロボット専門ショップ・Robotma.com社の3Dプリンタ組立てキット「Cellp3Dプリンタ」のデモンストレーションを実施。「CellP 3Dプリンタ」は組立てに必要な部材をセットにし、ユーザー自身が組み立てる、いわば3Dプリンタの自作キット。メーカー希望小売価格は15万4350円で、ビックカメラではイベント特典として当日10台限定で9万9800円で販売する。

組み上がった「CellP 3Dプリンタ」を実際に見ると、想像していたよりも大きかった。幅、奥行きとも400mm、高さは418mmの、まさに箱。そのなかに上下に動くプレートとホットエンドがついている。

ではどうやって立体物をつくるのだろうか。まずは本体に立体物の素材となる樹脂をセットする。「CellP 3Dプリンタ」では、1.75mmのPLA樹脂かABSフィラメントを使うことができる。樹脂は糸状になっており、本体の背部にセットする。使うときはミシンのように樹脂をホットエンドに送り出して使う。

本体の準備はできたらUSBケーブルで接続したPCから3Dデータを出力する。デモンストレーションでは制作時間を短縮するために厚さ数ミリのプレート状のものをつくった。

ホットエンドに送り出した樹脂を溶かして、トレイに押し出していく。まずは立体物の輪郭をトレイ上に描き、さらに線を引くように樹脂を流し込む。輪郭内を樹脂で詰めると、立体感を出すために2層目の樹脂を流し込んでいく。高さのあるものを制作するなら、この樹脂の層を何層も重ねていくことになる。直径7~8センチほどのプレートをつくるのに要した時間は10~15分ほどだった。

「3Dプリンタ」というと、思わず夢みてしまうのがフィギュアの制作。「CellP 3Dプリンタ」でフィギュアの制作ができるのかどうか、担当者に話を聞いた。すると、フィギュアをつくるためには、クリアしなくてはならない問題がいくつもあるという。その一つは設計図となる3Dデータだ。「Cellp3Dプリンタ」は3Dデータ作成ソフトが付属していないので、別途用意する必要がある。3Dデータ作成ソフトはインターネットで入手することができるが、3Dデータをつくるのにはそれなりの技能を要する。今回デモンストレーションで使った単純なプレートのデータなら1~2時間でできるそうだが、人型となると難しい。

3Dデータができあがった後にも課題がある。それは凹凸をつくるのが難しいということだ。例えば女性のウエストや、首から頭など、細いパーツの上に太いパーツを生成しようとすると、熱して柔らかくなった樹脂が垂れてしまう。

そのため、全身を一度につくり上げるのではなく、腕、足、胴体など、パーツごとにつくって、それを組み合わせなければならない。……と考えていくと、途方もない熱意と労力を要しそうだが、逆にこれらをクリアしてしまえばフィギュアを制作できるということだ。

「Cellp3Dプリンタ」は、プリンタ自体を自分で組み立てる組立てキットだ。なかなか大きなものだけに、組み立てられるか心配だが、ビスを止めたり、ベルトを固定したりするだけで組み立てられるという。ハンダなどで溶接する必要はないので、女性や、ちょっと工作が得意な子どもなら組み立てることができる。なお、工作に自信のない人は3万5000円で組み立てを依頼することもできる。

ビックカメラでの体験イベントは、8月2日の午後3~8時にビックカメラ池袋本店でも実施する。10万円以下の価格で手に入るのはいまだけなので、オリジナルフィギュア制作に挑戦したい人はぜひ見にいってほしい。(BCN・山下彰子)