6月2日、アップル製スマートフォン「iPhone 5」は前機種「iPhone 4S」の累計販売台数を抜き、「日本で一番売れたスマートフォン」の称号を継承した。2012年9月21日の発売から8か月強で「iPhone 4S」を超える歴代最速の販売ペースだ。家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」のデータをもとに、これまでの歩みを簡単に振り返りつつ、取り扱いキャリアが増えた「iPhone 4S」以降の販売動向をまとめた。なお、【後編】では、およそ6対4の比率で売れている、ソフトバンクモバイル・auそれぞれのシェア獲得のための取り組み・強みについて考察する。

●日本のケータイ業界とインターネットを変えたiPhone

「BCNランキング」によると、携帯電話の年間販売台数に占めるスマートフォンの割合は、2009年8.0%、10年20.5%、11年52.7%、12年74.0%と、10年から11年、12年にかけて上昇し、今年上半期(1~6月)は80.0%に達した。店頭では、10年夏あたりから、スマートフォン中心の陳列に切り替わった。

2008年7月11日に、国内初代モデル「iPhone 3G」が発売されてから、わずか5年で携帯電話とインターネットを取り巻く環境は一変した。スマートフォンは、iPadなどのタブレット端末とともに、インターネットにアクセスするツールとして、これまでパソコンが担っていたポジションを奪いつつある。メールやオンラインストレージ、動画・音楽配信などのインターネットサービスは、「クラウド」と「マルチデバイス」がキーワードになった。こうした変化は、「黒船」にたとえられたiPhoneの日本上陸をきっかけに生まれたものだ。

●LTE対応の最新モデル「iPhone 5」は歴代最速・最高の売れ行き

いまも続くiPhone人気の火つけ役となったのは、10年6月発売の「iPhone 4」だろう。モデルチェンジまで1年半以上にわたって売れ続け、スマートフォンの普及をけん引した。デザインはそのままに性能を強化した「iPhone 4S」を経て、フルモデルチェンジした現行の「iPhone 5」は、横幅は従来と同じで画面サイズを4インチに大型化し、デザインを一新。片手操作や、アップルの美学ともいえる薄さ・軽さにこだわりながら、高速通信のLTE・テザリングに対応し、より使いやすくなった。発売直後は予約が殺到し、発売から2か月ほど経った11月中旬まで、予約してもなかなか入手できない品薄状態が続いた。

品薄が解消した後も売れ続け、今年3月は、おもに「学割」キャンペーンの効果で、12年11月に次ぐ販売台数を売り上げた。iPhoneの好調な売れ行きは、基本使用料無料や端末代の値引きなど、おトク感の高いキャンペーンを次々と打ち出すキャリアが支えているともいえる。

2010年6月以降の携帯電話の累計販売台数を集計すると、1位は「iPhone 5」、2位は「iPhone 4S」、3位は「iPhone 4」となり、トップ3はiPhoneシリーズが独占した。販売台数シェアは合わせて19.5%に達し、過去3年間に売れた携帯電話のうち、およそ5台に1台がiPhoneということになる。

●キャリア別ではソフトバンクが優勢、6割弱を占める

iPhoneは、現在、ソフトバンクモバイルとKDDI(au)が販売している。発売当初はソフトバンクモバイルだけだったが、11年10月発売の「iPhone 4S」からauも取り扱うようになった。2キャリアが販売する「iPhone 4S/5」の13年7月までの累計でのキャリア別販売台数シェアは、ソフトバンクモバイルが56.7%、auが43.3%。比率はほぼ6対4で、10ポイント以上の差をつけてソフトバンクモバイルが優勢だ。

ソフトバンクモバイルが6割弱のシェアを獲得している要因として、auでは実施していない機種変更向けキャンペーンによる既存ユーザーのつなぎ止めや、CMなどでアピールしている「つながりやすさ」の改善がありそうだ。(BCN・嵯峨野 芙美)

→【後編】に続く(2013年8月9日掲載)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。