ミュージカル『ドラキュラ』稽古場より。和央ようか ミュージカル『ドラキュラ』稽古場より。和央ようか

2011年に初演されたミュージカル「ドラキュラ」オーストリア・グラーツ版が再演される。本作の注目点は、なんといっても元宝塚トップスターの和央ようかがドラキュラ伯爵役を演じること。初演時、女性がこの役を演じるのは世界初の快挙だったが、より妖艶でデンジャラス、かつ一人の女性を愛し続けるひたむきさが胸に迫る和央独自のドラキュラ像を作り上げ、大好評を博した。8月23日の開幕まで1か月を切った7月某日、本作の稽古場を見学した。

ミュージカル『ドラキュラ』チケット情報

ダンスもこの作品の大きな見どころとあって、稽古開始30分ほど前からキャストはアンサンブルを中心に、ウォーミングアップに余念がない。そんな中、金髪がまぶしい座長の和央ようかが入ってくると、稽古場に一瞬緊張感が走るが、本人は「おはようございまーす!」とにこやかにキャストたちの輪に溶け込む。

この日の稽古は一幕前半の、ドラキュラ初の吸血場面が含まれるシーンからスタートした。スペース中央に巨大な紫色の正方形の布が敷かれ、その上にジョナサン役の辛源が横たわっている。ドラキュラの手下のヴァンパイアや女性コロスがジョナサンの血を求めて妖しく迫る中、静かな迫力と冷気を伴って、黒マント姿の和央ドラキュラが現れた。和央自身が稽古場に入ってきたときと同様、一瞬で空気が変わる。男性キャストに比べれば大柄とは言えない和央だが、内面からにじみ出る存在感とオーラ、そして堂に入った男役の演技で魅せるスケール感は見事。……と思いきや、小さなミスをしたらしく、カットがかかった瞬間「すいませんでしたー!」と慌てて演出・吉川徹のもとに駆け寄るひと幕も。ピアノの横でリズムをとりつつシーンを見ていた吉川は「指揮に夢中で気づかなかった!」と豪快に笑いながら返し、カンパニー全員にも「(取材陣の目は)気にせず、楽しんで!」と声を掛ける。初演から続投のメンバーが多いこともあってか、格調高く耽美な作品世界とは裏腹に、明るいリラックスムードに包まれていたのが印象的だった。

初演との大きな変化のひとつが、ヒロイン・ミーナを、前回はミーナの友人ルーシー役を務めていた安倍なつみが演じること。この日の安倍の登場シーンはわずかだったが、意志的で健気な、彼女らしいミーナ像を垣間見せていた。また初参加となるルーシー役の菊地美香は、ソロナンバー「霧」を披露。ドラキュラに魅入られた心情を歌う楽曲だが、人気作曲家フランク・ワイルドホーンの吸引力あるメロディは、繊細ながらパワフルな菊地のソプラノボイスにぴったり。作品における聴きどころのひとつとなるだろう。

公演は8月23日(金)から9月8日(日)まで、東京国際フォーラム ホールCにて。チケット発売中。

取材・文:武田吏都

「ウレぴあ総研」更新情報が受け取れます