『ワールド・ウォーZ』を手がけたマーク・フォースター監督

ブラッド・ピットの主演最新作『ワールド・ウォー Z』が間もなく公開になる。人類滅亡の危機を描いたパニック大作だがマーク・フォースター監督は本作を「単なるディザスター映画ではないから引き受けた」という。その真意はどこにあるのだろうか。来日時に話を聴いた。

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映画は、かつて国連職員だったジェリー・レインが家族と外出した際に謎のウィルスによって人々が常軌を逸した状態になっている場面を目撃する場面から始まる。ウィルスは爆発的な規模と速度で拡大し、彼は愛する家族と離ればなれになりながら世界を巡り、人類滅亡の危機を救うべく行動する。

これまでも“世界の危機”を扱った大作が多く製作されたが、そのほとんどが極めて限定された空間を舞台にしてきた。世界各国の模様はインサート映像やセリフで処理され、主人公は一定のエリアの中で活躍した。しかし本作の主人公は拡大するウィルスを止める手だてを求めてアメリカだけでなく世界を駆け巡る。フォースター監督は「これはとてもトリッキーな設定だと思います」と前置きした上で「だからこそこの企画をやりたいと思いました。それに世界を舞台にした壮大なドラマと、ひとつの家族という最小の集団を描くことにも魅力を感じました」と語る。

ジェリーは劇中で様々な場所を訪れる。韓国では在韓米軍が感染者と熾烈な銃撃戦を繰り広げ、エルサレムでは暴徒と化した感染者が壁を超えて押し寄せてくる。そこではつねにド派手なアクションが繰り広げられるが、舞台になっているのは複雑に入り組んだ世界情勢を物語る場所だ。「世界の”現在”を象徴する場所を選んで登場させました。この規模のハリウッド映画で、世界の現状をメタファーを盛り込みながら描くことは不可能に近い。でもこの映画は単なるディザスターではなく、政治的な題材や世界の現状を描けることが大きな魅力でした」。

そこで主人公はアメリカの科学者や軍人ではなく元・国連職員に設定された。どこの国の利益も代表していない、家族のことだけを守ろうとする男が人類の危機を救うために世界を飛び回る。このドラマには監督の強い想いが込められている。「僕は人間が好きで楽観主義者でいたいので、何らかの脅威が訪れたら、人間は国という単位を超えて団結して戦ってほしいと思っています。それにどの国に生まれても”家族愛”は普遍的なドラマですよね? 僕はこの映画の核心は家族のドラマだと思っています」。

本作には息をのむアクションや破壊描写が次々に登場する。しかし、その根底には現代社会のあり様と、どんな時代や国でも変わらない“家族のドラマ”が描かれている。

『ワールド・ウォー Z』
8月10日(土)TOHOシネマズ 日劇ほか全国ロードショー