『スター・トレック イントゥ・ダークネス』に出演したベネディクト・カンバーバッチ 撮影:源賀津己

“時の人”。そんな表現がふさわしいベネディクト・カンバーバッチが二度目の来日を果たした。『スター・トレック イントゥ・ダークネス』で“世紀の悪役”と呼ばれるパワフルなキャラクターに扮した彼に、演技へのこだわりを訊ねてみた。

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カンバーバッチが演じるのは、復讐に燃えるジョン・ハリソンという謎の人物。たったひとり、地球を相手に闘いを挑む。「勧善懲悪の悪役じゃない、というのがまずいいと思った。彼には確固たる信念があり、それは愛する人たちに対する情熱と忠誠心に裏づけされている。つまり、僕ともみんなとも何ら変らないんだ。ただ、それを追求するときに彼は暴力を使ってしまう。自分が常人よりもパワーがあるのをわかった上でね。その部分が彼を“悪役”にしているんだ」

分析して演じる。理解して演じる。だから、たとえそれが悪役であろうと、すこぶる魅力的になる。自分の“モノ”になっているがゆえの安定感も伝わってくる。「今回は、クランクインまでが2週間しかなかったので、事前に時間をかけての役作りは難しかった。だから、演技を続けながらジョン・ハリソンというキャラクターを進化させるという方法をとったんだ。上手くできたとは思っているけれど、恥ずかしながら数シーン、ハリソンになりきれてないところがある。僕しかわからないとは思うけど、やっぱりダメだよね」。この演技に対する真面目さと厳しさがファンのツボ。彼の演技の話を聞いていると、本作がエンターテインメントなSFアクションであることさえ忘れそうなほどなのだ。

ちなみに、今回の来日では成田空港におよそ1000人ものファンがつめかけた。去年12月の初来日のときは500人だったので、半年で倍に膨れ上がったことになる。「とても嬉しいし、気分も高揚する。それに大きな励みにもなる。でも、僕のことばかりじゃなく、ほかのことに目を向けなくても大丈夫? と少し心配してしまって……」。もちろん、こういう心配りもファンのツボ。彼が愛される理由だ。

取材・文:渡辺麻紀 撮影:源賀津己

『スター・トレック イントゥ・ダークネス』
8月23日(金)より、TOHOシネマズ日劇ほかで公開
※8月16日(金)、17日(土)、18日(日)先行公開あり