マイケル・メイヤー マイケル・メイヤー

8月8日に開幕したミュージカル『アメリカン・イディオット』。同作は、『春のめざめ』でトニー賞最優秀演出賞を受賞した気鋭の演出家、マイケル・メイヤーが、アメリカのパンクロックバンド、グリーン・デイのアルバム『アメリカン・イディオット』を聞き、ミュージカル化を提案。そのプロットに共感した、同バンドのボーカル兼ギタリスト、ビリー・ジョー・アームストロングも、作詞・共同脚本として携わり、さらには自らも出演し、ブロードウェイデビューを飾った作品だ。ツアーカンパニーとともに来日中のマイケル・メイヤーに話を聞いた。

「『アメリカン・イディオット』はアメリカの若い世代の心の叫びそのものなんだ。アルバム発売された2004年当初、世界同時多発テロ後のブッシュ政権下、どこに進んでいったらいいのかわからない“迷子”の若者たちが街にあふれていた。そんな時代にビリーは、このアルバムを通して、若い人たちの心を代弁した。明確なビジョンを持った彼の声は、若者の心にビビットに響いたんだ。彼は、女の子のこととか、マスターベーションとか、マリファナとかだけでなく、もっとずっと大きなことを歌っていた──。そう、このアルバムにはたくさんの物語が詰まっている。何度も何度も聞いているうちに、アルバムのなかで綴られている物語が見え始めてきたんだ」

そう熱く語るメイヤーが、ビリーとともに作り上げたのが、同時多発テロ後のアメリカを舞台にした3人の若者の物語だ。3人はありふれた郊外の街での毎日に辟易し、街を出ることを決意するが、やがて引き裂かれ、それぞれの世界で人生の意義を見つけようともがき、葛藤する。

「この作品を通して、観ている人にもこれからの人生を生き抜いていくためのインスピレーションを得てもらえるんじゃないかなと思っている。シンプルなストーリーだけど、いろいろな要素を持っている作品なんだ。曲はすばらしいし、視覚的にも楽しめる。今まで観たことのないショーになっているはずだよ」

さらにマイヤーは今回のツアー版の強みとして、キャストの若さを挙げる。「彼らは今、実際に、自分が演じる役柄の年代を生きているんだ。そして、自分のすべてをかけて、『アメリカン・イディオット』という作品に挑んでいる。そのエネルギーを存分に感じてほしい」

ブロードウェイ公演をはじめ、各公演地では、普段はミュージカルを観ないような、パンク系の若者たちもが劇場に詰めかけたという。「ミュージカル」という枠組みを超えた、エネルギーと疾走感あふれる100分間の旅の果てににあるものとは──?。

ミュージカル『アメリカン・イディオット』は8月18日(日)まで東京・東京国際フォーラム ホールCにて上演中。

取材・文:長谷川あや