(左から)真木よう子、廣木隆一監督

スマートフォン向け総合エンタメアプリUULAにて配信中のオムニバスドラマ「I LOVE YOU」のEpisode3「Sidewalk Talk」にて初めて現場を共にした真木よう子と廣木隆一監督。数々の話題作に携わり、文字通り八面六臂の活躍を見せるふたりが初顔合わせをふり返った。

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離婚を決めた夫婦のレストランでの“最後の晩餐”を通して、夫の前でも弱さを見せることのない妻の心の奥にある思いを描き出していく本作。真木にとって以前よりファンだったという作家・本多孝好の短編小説の原作、そして「俳優仲間から『すごくいい監督だよ』と聞かされていた」という廣木監督の存在が、出演の決め手となったという。

真木に限らず、廣木監督の演出を受けてみたいという女優は多い。具体的な“答え”を提示することなく何度もテイクを重ねていく手法は「厳しい」と評判だが、仕事を共にした女優の多くが「また出たい」と語る。真木もそんな一人であり、廣木監督演出の魅力をこう説明する。「たとえ何も言わずにテイクを重ねるにしても、そこにちゃんと信頼があるんです。ちゃんと役者に考えさせるし、100%役になりきるための時間をくれる。それがありがたかったし、私にとってはやりやすかったです」。

現場のみならず取材の場でも廣木監督は決して多くを語らない。女優の魅力を引き出す秘訣についても「何もない(笑)。そんな技、持ってないから、あけっぴろげに『やってください』と言うだけ。ひとつだけ言うのは『そこ、気持ちがないですよね』ということかな」と照れくさそうに笑みを浮かべるばかり。真木については「いろんな役をやっているのでどんな人なんだろうかと興味があった」と言うが、実際に現場で観察し「すごく真面目だった。いろいろやっているからもっと柔軟で要領がいいかと思ったけど、すごく真っ直ぐ。いや、真っ直ぐだからこそいろんな役ができるんですね。僕はいち観客として真木よう子を見ていただけ(笑)」とその魅力を明かす。

「脚本を読んで『本当に素敵な物語だな』と思った」という真木。「素直じゃなくてお互いに不器用で、それでいて大人」であることがこの夫婦の関係を難しくしていると指摘する。「私のメイクさん(30代・独身)が号泣してましたが(笑)、分かるんですよね、ある程度の年齢を重ねている女性にはこの主人公の気持ちが…」としみじみと頷く。

真木もまた自らを「不器用なタイプ」と語るが「そんな自分が嫌いじゃない」とも。「あえて器用に自分を直そうとは思ってないです。もちろん、自分で嫌気がさすことはありますけど(笑)。でも不器用な人ほど魅力を感じるし、そもそも完全に器用な人間なんていないと思う。若いときは自分の不器用さが嫌で、変に自分じゃないようにふるまってニコニコしたり無理してる自分がいましたが、いまは自分が好きだと思える人たちに『そのままでいい』と言ってもらえればいいなと思ってます」。

「I LOVE YOU」
UULAにて配信中

取材・文・写真:黒豆直樹