大ヒットを記録中の映画『けいおん!』。2期にわたるTVシリーズ(2009年、2010年)から今回の映画までを手がけてきた、京都アニメーションの山田尚子監督にお話を聞いた。

女子高生の一番輝いている時期を描きたかった

(C)かきふらい・芳文社/桜高軽音部
拡大画像表示
――『けいおん!』は2期にわたって展開されたTVシリーズのアニメーションでしたね。今回は映画ということで新しく挑戦された部分をお聞かせください。
 
主人公の(平沢)唯たちの持っている空気をTVシリーズと変えないように意識しました。今回は“映画”ということで映像的にもクオリティの高いものが求められますし、私としても挑戦してみたかったのでより生っぽい映像を目指して、映像を手持ちカメラ風にしたり、広角レンズ風にしたり、TVシリーズのときからもうひと手間、もう一歩踏み込んだ映像作りをしています。
 
――物語のイベントを卒業旅行にした理由は?
 
制服が描きたかったんです。やっぱり唯たちが制服を着ている姿はすごく魅力的です。はじめて『けいおん!』を観てくださる方もいらっしゃると思うので、やっぱり一番輝いている時期を見て欲しい。制服コンプレックスかもしれないですけど……制服が好きなので(笑)。
 
――今回の卒業旅行の舞台をロンドンにした理由は?
 
ロンドンは音楽の聖地ですし。登場人物のひとり、(秋山)澪ちゃんは音楽の趣味がシブいんですよね。好きなミュージシャンの名前を挙げると、大御所の名前が出てくるような子なので。自然とロンドンに決まりました。
 
――ほかに行き先の候補はありましたか?
 
唯たちが劇中で挙げている場所以外ではフィンランドがありましたね。(琴吹)紬の別荘があるから……とか。劇中で行きたい場所を挙げるんですが、残念な子たちなので、行きたいところにたどり着いても、そのことに気付いていないんです。アビーロードを渡っていても、本人たちは気付いていなかったりして(笑)。
 
――ロンドンには山田監督たちもロケハンに行かれていますよね。どんなところに注目していましたか?
 
シナリオライターの吉田(玲子)さんとタッグを組んで回りました。いわゆる観光名所は意識していませんでしたね。むしろ「道に落ちている葉っぱの形がかわいい」とか「外国の家の窓はかわいい」とか、唯たちはそういうところに目がいくはずなので。まあ、唯たちが名所を見て満足するとは思えないですからね。
 
――実際にロンドンに行かれて、山田監督が注目したところは?
 
外国人の背は大きい! それは実感としてもありましたし、うまく画面に出せたような気がします。
 
――アフレコのときは、山田監督がロンドン土産の紅茶をお持ちして、キャストのみなさんでお茶をしたとか。キャストの皆さんにはどんな言葉をかけたのですか?
 
TVシリーズでキャストのみなさんと初顔合わせをしたときから変わらないんですが、とにかく「普通にお願いします」とお話しました。映画では映像的に盛り上げたり、感傷的な演出もあったりするんですが、唯たちにとってそれは関係ないことで、映像の作り手側が勝手にやっていることなんです。だから、キャストさんたちには「演技を過剰に美化しないで、どんな素敵なシーンであっても、普通にしゃべってください」とお願いしました。