桐谷美玲 (撮影:源 賀津己) 桐谷美玲 (撮影:源 賀津己)

幾度となく再演を重ねる数々のつかこうへい作品。その中でもとりわけ、思い入れの強いファンの多い舞台『飛龍伝』。70年代の安保闘争を舞台に、全共闘の女隊長とその敵である機動隊隊長との恋を描くこの作品が10月、『飛龍伝21』として青山劇場で上演される。1990年上演の富田靖子から数えて7代目のヒロインを演じる桐谷美玲に意気込みを訊いた。

桐谷は昨年、つかの『新・幕末純情伝』で初舞台にして主演を務めた。「『新・幕末純情伝』は自分なりに全力を投じてやりきった。私ってやっぱり体力があるんだな、と思いました」と笑う。体力的にも精神的にもおそらく相当大変であろう初舞台・初主演の稽古も彼女にかかれば「全然つらくなかったです」。若くして肝が据わっていると思いきや「いつも不安だらけ。もちろん今回も大きなプレッシャーを感じています。でも前回もそうだったように、稽古が始まってしまえば、周りの方に助けられてきっと毎日楽しく過ごせる」と確信に満ちた表情を見せた。

「台本に書かれているからその通りに演じるのではなくて、セリフや行動が当然そうなるようになっているから自然に出てくるという感覚が新鮮でした。ドラマや映画で順撮りをすることはあっても、最初から最後まで一気に演じることは舞台でしかできない。またつかこうへいさんの脚本を演じられるのはうれしい」と再びつか作品に挑む喜びを見せる桐谷。演出の岡村俊一は「『飛龍伝』の主人公・神林美智子には強い女の印象があるかもしれないけれどそれは間違い。人間味のある普通の女の子が時に鬼に見えるのが重要」と語った。それを受けて桐谷は、「たしかに私はカッコよく強い女性というわけではなく、本当に普通。こんな普通の私がどう強くなっていくかは、私の頑張りどころ。期待に応えたいですね」と決意を新たにした。

桐谷といえば女優業だけでなく、『NEWS ZERO』でのキャスター姿も印象深い。「いろんな世界に触れられる環境にあるのはとても幸せ。同世代でもまったく違う世界で活躍している人の話を訊いたり、様々な事柄について海外の状況を知ったりできるのは、刺激になります。映画もドラマも報道も全部自分だけれど、それぞれの場所で違う面を見せることができるのが楽しい。『飛龍伝21』ではまた新しい自分を見せられたらなと思います」。桐谷美玲版神林美智子はどんな女性として私たちの目の前に現れるか、期待が募る。

 舞台は10月5日(土)から20日(日)まで、東京・青山劇場にて。チケットの一般発売は8月24日(土)午前10時より。なお、チケットぴあではインターネット先行抽選を8月14日(水)午前11時まで受付中、インターネット先行先着を8月16日(金)午前10時より受付開始。

取材・文/釣木文恵