家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、2013年7月のスマートフォンの月間販売台数は前年同月の80.8%だった。前年比2ケタ減は、集計開始以来初めて。従来型携帯電話は、もう何年も前年割れの状態が続いており、携帯電話全体の販売台数は、7月としては過去4年間(2010~13年)で最低だった。

●初のニケタ減 今年の夏商戦は「5月」がピーク?

スマートフォンのうち、アップルのiPhoneシリーズは、前年同月比122.6%と好調。対して、全体の7割弱を占めるAndroid搭載スマートフォンが前年同月比69.4%と低調で、スマートフォン全体では前年割れとなった。キャリア別でみると、ドコモの落ち込みが激しい。

ただ、このキャリアによる差は、iPhoneの取り扱いの有無というよりも、夏モデル発表後、すぐに「ツートップ」に位置づけた主力機種「Xperia A(エース) SO-04E」「GALAXY S4 SC-04E」を発売したために、ピークが例年とずれてしまったことが大きい。au、ソフトバンクモバイルも、ドコモ同様、5~7月の販売台数は、5月をピークにやや減少しており、キャリアを問わず前倒しの反動が出ている。

スマートフォンの購入者層が広がるにつれ、家電量販店ではなく、「BCNランキング」の集計対象外のキャリアショップで購入する割合が高まっているとみられ、実際よりマイナス側に振れている感は否めない。9月下旬発売予定の「初音ミク」とのコラボレーションモデル「Xperia feat. HATSUNE MIKU SO-04E」や、すでにさまざまな噂が流れているiPhone次期モデルなどを待つ買い控えの影響もあるだろう。7月31日、NECカシオモバイルコミュニケーションズ(NEC)は、スマートフォンの新規開発を中止し、現在販売中の機種をもって生産・販売を終了すると発表した。かつて、携帯電話のトレンドをリードしていたNECの撤退が象徴するように、13年7月は、スペック面の進化とともに、ずっと上がり調子だったスマートフォンのターニングポイントだったかもしれない。

●値下げ効果で「GALAXY S4」が2位に浮上 7月に限るとツートップはほぼ半々

夏モデルの発売前倒しの影響を受け、7月の携帯電話の月間ランキングは、auの「AQUOS PHONE SERIE SHL22」が10位にランクインした以外、ほとんど6月と同じだった。1位は、前々月、前月に続き、ドコモの「Xperia A SO-04E」が獲得。ドコモの13年度第1四半期決算説明会資料によると、「Xperia A SO-04E」は、従来型携帯電話からの取替えが多く、約62%を占めたという。決め手は、実質負担額の安さ(ドコモの継続利用期間10年未満なら1万5120円、10年超なら5040円)と、安心して使える高い防水性能だろう。前月4位だったドコモの「GALAXY S4 SC-04E」は2位に浮上し、3位にauの「iPhone 5」16GBモデル、4位にソフトバンクモバイルの「iPhone 5」16GBモデルが続いた。

通常はキャリア・容量ごとに別々にカウントしている「iPhone 5」について、キャリアごとに合算すると、1位は、ソフトバンクモバイルの「iPhone 5」(13.7%)、2位はauの「iPhone 5」(12.9%)、3位はドコモの「Xperia A SO-04E」(11.1%)、4位はドコモの「GALAXY S4 SC-04E」(9.7%)となり、1位と2位、3位と4位は、それぞれ僅差だった。この上位4機種だけで、携帯電話全体の47.4%とほぼ半数を占め、製品別では、2キャリアが販売する「iPhone 5」の独走が続く。

7月のトピックスとして、サムスンのグローバルモデル「GALAXY S4」を日本向けにローカライズした「GALAXY S4 SC-04E」の躍進を挙げたい。MNP(携帯電話番号ポータビリティ)なら、もともと割引適用後の実質負担額が0円のうえ、さらに合計4万円キャッシュバックされるという大盤振舞いのキャンペーンが功を奏したのか、販売台数は6月より増えた。またドコモは、7月19日から、iモードユーザーを対象とした「はじめてスマホ割」の対象機種を拡大し、同時に「GALAXY S4 SC-04E」の割引額を増額したために、機種変更の場合、実質負担額は発売当初より約5000円安くなり、「Xperia A SO-04E」との差も約5000円に縮まった。

発売以来の累計販売台数は、「Xperia A SO-04E」の6割弱にとどまっているものの、7月に限ると、ほぼ半々に近い水準まで接近した。当初の売れ行きの差は、価格によるところが大きかったようだ。なお、MNP利用時のキャッシュバック金額は、8月1日から合計3万円に下がっている。

最後に、主要3キャリア、ドコモ・au・ソフトバンクモバイルのキャリア別月間トップ10を紹介しよう。各キャリアとも、2位以下は、「みまもりケータイ」のような防犯ブザーつき端末を含め、従来型携帯電話が目立つ。指定の従来型携帯電話の同時購入を条件に、スマートフォンを「MNP一括0円」などで販売している店があるためだ。純増数アップのために回線契約を増やしたいキャリア、自店で多く端末を売りさばきたい販売店、スマートフォンをできるだけ安く手に入れたいと思うユーザーの思惑が一致した結果、従来型携帯電話は、店の片隅に追いやられてもラインアップとして残っている。

ドコモは、「ツートップ戦略」について「一定の成果があった」として、スマートフォンへの移行数の増加、応対時間・待ち時間の短縮、端末の調達コストの低減などを挙げている。5年間、頑なに拒んできたiPhone取り扱い開始に向けた布石とも、iPhoneを決して取り扱わない意向の表れにもみえる。(BCN・嵯峨野 芙美)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。