『パシフィック・リム』 (c)2012 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.AND LEGENDARY PICTURES FUNDING.LCC

映画『パシフィック・リム』が日本でも大きな話題と賞賛を集めている。メキシコで生まれ育ったギレルモ・デル・トロ監督が日本のアニメや怪獣映画に強い影響を受けて製作した超大作だが、彼は「日本と西洋の架け橋を常に更新し続けることが重要」と力説する。

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本作は、太平洋の深海から出現した未知の巨大生命体“怪獣”に立ち向かうべく、人類が英知を結集して人型巨大兵器“イェーガー”を開発し、壮絶な戦いを繰り広げる様を描いている。

メキシコで育ったデル・トロ監督は子供の頃からテレビで日本のアニメを観て成長した。やがてコミックや怪獣映画も愛するようになり、長年に渡って日本のカルチャーに熱狂してきたという。デル・トロ監督は「日本のアニメはかつて“子供向け”の作品としてアメリカやヨーロッパに輸出されていました。それが、80年代や90年代に入り、『AKIRA』『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』など、それまでとは全く異なる“大人向け”のものとして登場しました。私のような世代のオタクだけではなく、新しい世代の子供たちもアニメに再び繋がり始めたのです。すべてのクリエイターにとっても衝撃でしたよ。アニメがなければ『マトリックス』も『ブレイド』も『ブレイド2』も『ヘルボーイ2』もなかった。ものすごい影響力でした」と振り返る。

西洋のアニメを模倣するかたちで日本のアニメがはじまり、やがて日本のアニメが西洋の作品に影響を与えた。デル・トロ監督は「日本と西洋の架け橋を常に更新し続けることが重要だと思います。ちょうど、宮崎駿様が新作『風立ちぬ』を完成させました。まったく新しいテーマで、期待通り本当に美しく完璧な作品だと思いました。ウィリアム・ギブソンやデイヴィッド・クローネンバーグが漫画やアニメに影響を与え、その後に漫画やアニメがクローネンバーグや私に影響を与えました。東西のクリエイター同士がお互いに影響を与えながら、常に新しくあり続ける事が重要なのです」。

デル・トロ監督は日本のアニメの要素を単にマネするのではなく、ロボットや怪獣を用いて世界中の人たちと会話し、影響を与え合おうとしている。「国際的なコミュニケーションは複雑で、商業経路に左右されてしまうので非常に難しい。大人向けの漫画やアニメはいつだって純粋なコミュニケーションのフォーマットとして存在したのです」。だからこそ彼は日本の若い世代にも大きな期待を寄せている。「日本はとてもユニークなポジションにあると心から信じています。今の若者が大友克洋や手塚治虫を尊敬したように、次の世代の人々は彼らを尊敬するでしょう。それは次から次へと、繰り返されるものです」。監督は本作を“日本へのラブ・レター”と称したが、やがて手紙を受け取った観客の中からまた新たな作品が生まれるのではないだろうか。

『パシフィック・リム』
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