『クロニクル』 (C)2011 Twentieth Century Fox

全米公開時に大きな話題を呼び、熱狂的なファンが続出した映画『クロニクル』が9月に公開される。平凡な高校生が強大な“力”を手にしてしまったことから始まる物語を描いた作品だが、米公開時には大友克洋監督の名作『AKIRA』の影響を指摘する観客が多く現れた。本作を手がけたジョシュ・トランク監督は『AKIRA』の大ファンだという。

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本作の主人公アンドリューは、人付きあいが苦手で、学校でも孤立しているが、嫌々でかけたパーティ会場の庭で“巨大な穴”を発見する。アンドリューはその場にいたスティーヴと、アンドリューの様子を見に来た親戚のマットと3人で穴の中に入り、そこで“不思議な力”を手に入れる。念じるだけで自由にモノを動かすことができるようになった彼らはイタズラをして楽しんでいたが、次第に大きくなる力を制御できなくなり、予想外の事態に巻き込まれていく。

トランク監督は「僕は『AKIRA』の大ファンなんだ。あの作品が映画界に間違いなく大きな影響を与えているのは明らかだよ。僕たちの10代だった頃が作品のキャラクターにうまく表れていて、それが僕らを『AKIRA』に夢中にさせたんじゃないかな」と語る。主人公のアンドリューは長年、劣等感に悩まされてきたが圧倒的な力を経て大きく変貌していく。まるで『AKIRA』の島鉄雄を思わせるキャラクターだが、そこにもトランク監督の強いこだわりがある。「敬意のあるオマージュ作品を作るには、あからさまな模倣や完全にコピーするんじゃだめなんだ。僕は敬意のあるオマージュ映画が大好きで、そうゆうものを取り入れて目新しい視点で作りたかったんだ。アンドリューは何も悪いことをしていないただの子供なんだ。彼は隠れる場所がどこにもなかった。彼を理解してくれる人は誰もいなかった。僕は本当にその概念を取り入れたかった」。

ちなみにトランク監督はアンドリューに“幼い頃の自分”を投影している。「僕はそういう環境で成長してきたから、ひとりぼっちの概念を取り入れている映画に強く影響されるんだと思うよ。大人になっていく世界へ押し込められていた時、外の世界に対して壁を作ったり、怒りを増大してしまう。それはただ副作用や経験によるものなんだ。僕たちは最後まで彼がどうなっていくのか見ることができるけど、誰もが彼を嫌いになるとは思えないし、この子に同情するんじゃないかな」。

驚異的な”力”のバトルと、繊細な青春ドラマが描かれた『クロニクル』は、全世界の『AKIRA』のファンにとっても必見の1作になっているのではないだろうか。

『クロニクル』
9月27日(金) 2週間・首都圏限定ロードショー