タッチパネル操作のスマートフォン・タブレット端末に欠かせない保護フィルム(保護シート)。家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、1か月の販売数量(パッケージごとにカウント)は、同月のスマートフォン販売台数の2~3倍に上る。貼り直しやストックのために同時に複数購入したり、保護フィルムだけを追加で購入したりするケースが多いとみられ、販売数は伸びる一方だ。

2013年7月のスマートフォン用保護フィルムの販売数は、スマートフォン本体の2.9倍。2年前の11年7月の1.5倍で、3年前の10年7月に比べると実に4.3倍に拡大した。11年6月以降、スマートフォン用保護フィルムの販売数は一度も前年を下回ったことはなく、12年3月までは前年同月比で200%を超え、13年に入っても前年同月比104.3~144.9%と、高い伸び率を維持している。

●豊富なバリエーション 「光沢」より「アンチグレア」がやや人気

保護フィルムは、いくつかのタイプに分かれる。「アンチグレア(反射防止)」「光沢」「のぞき見防止」「鏡面(ミラー)」といった定番から、触り心地をよくする「スムースタッチ」、ディスプレイが発するブルーライトをカットする「ブルーライトカット」、表面のキズを自然に修復する「傷修復」、ディスプレイの破損やひび割れを防ぐ「耐衝撃・衝撃吸収」「飛散防止」などのプラスアルファの機能を追加したものまで、バリエーションは豊富だ。さらに最近は、素材にガラスを採用することで「硬度が高くキズがつきにくい」「落としても画面が割れない」といった特徴をもつ強化ガラス製の保護シート(ガラスパネル)や、アクリル素材などを採用した保護パネルも登場している。

タイプを問わず、「気泡レス」「気泡ゼロ」「イージーフィット」「エアレス」などと銘打ち、貼りつけるときに気泡が入らないよう加工を施している製品が増えている。また一部の店舗では、購入した保護フィルムを無償で貼りつけるサービスを提供している。どちらも、「貼りつけるときの手間」や「貼りつけ後の不満」を解消するものだ。保護フィルムは、フリーカット(汎用)製品以外はあらかじめ対応機種用にカットされているが、それでも「気泡レス」タイプではない場合、きれいに貼りつけるのはなかなか難しい。

スマートフォン用の保護フィルムに絞って、13年1~7月の累計でのメーカー別販売数を集計すると、「ラスタバナナ」ブランドのテレホンリース(47.1%)、エレコム(20.6%)、バッファロー(11.3%)、レイ・アウト(8.6%)の上位4社で9割弱を占める。シェアの高さは、おおむね売り場スペースの広さと比例しているといってもいいだろう。ただ、全体の販売数が多いので、シェア1%前後のメーカーでも販売数はかなり多くなる。タッチ感や貼りやすさ、機能性などを重視して、メーカーやブランドにこだわらずに、気に入ったものを購入する人も少なくないようだ。

各キャリアの夏モデルがほぼ出揃った2013年7月のスマートフォン用保護シートの販売数1位は、テレホンリースのXperia A SO-04E用反射防止(アンチグレア)フィルム「T447SO04E」、2位はエレコムのiPhone 5用指紋防止光沢フィルム「PS-A12FLFAG」だった。上位20製品のうち、12製品が反射防止(アンチグレア)タイプ、残り8製品が光沢タイプ。いずれも500~700円程度のスタンダードタイプで、画面の光沢感を高める「光沢」より、反射や映り込みを軽減し、指紋がつきにくい「アンチグレア」のほうがやや人気がある。

●保護フィルムが売れる機種は「スマホ初心者」が多い?

保護フィルムは、店頭では機種ごとに陳列されているのが普通。対応機種別ごとに販売台数構成比を集計すると、ドコモの“ツートップ”である「Xperia A SO-04E用」は10.5%、「GALAXY S4 SC-04E用」は5.7%だった。一方、「iPhone 5用」は22.7%、「iPhone 4S/4用」は9.8%だった。人気機種の場合、本体の販売終了後も、保護フィルムなどの専用アクセサリはしばらく継続して販売されるので、iPhone 4S/4やXperia acro HD、GALAXY S IIIなど、旧機種用も売れている。

ドコモによると、「Xperia A SO-04E」は従来型携帯電話(フィーチャーフォン)からの変更が約6割を占めたが、「GALAXY S4 SC-04E」はフィーチャーフォンからの変更は少なく、スマートフォンからの変更が半数を占めたという。つまり、「Xperia A SO-04E」の購入者のほとんどは、スマートフォンを初めて使う「初心者」ということになる。スマートフォン本体と対応保護フィルムの売れ行きから推測すると、スマートフォン初心者は、本体と保護フィルムを同時に買い求める傾向があるようだ。

画面の美しさや操作性を損なうということで、「保護フィルムやケースは不要」と主張する人もいる。現に最近のAndroid搭載スマートフォンの多くは、防水・防塵に対応し、ディスプレイ部分に汚れや指紋、キズなどがつきにくいよう加工を施しているために、以前とは異なり、そのまま使っても問題はないだろう。それでも、「画面をきれいにしておきたい」という思いや安心感から、保護フィルムに対するニーズは根強い。ケースと並ぶスマートフォンの定番アクセサリとして、今後も伸び続けるのは間違いなさそうだ。(BCN・嵯峨野 芙美)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。