Brandel Brandel

ロックバンドBrandelの全国ツアーが8月25日神奈川・横浜F.A.Dよりスタートした。

Brandelは、2010年に東京で結成されたロックバンド。ド迫力のロックサウンドと、メロディックな合唱コーラスが心地良く、ロック好きなら老若男女問わず心に響く楽曲を発表している。ジャンルは広義ではオルタナティブロックなのだが、そのサウンドはカテゴリーでは括れず、Brandelならではのヒネくれ方と器用さがある。同時に、「ステージに立つ」「絶対にリスナーに届けたい」という強い意志、「生」の力を信じる彼らの思いも伝わってくる。

8月21日にリリースされたばかりの3rdアルバム『Awake』は、そんな彼らの今の全てが詰まったロックアルバムだ。まだ一般メディアでは無名な彼らではあるものの、過去の作品もタワーレコード等ではビッグネームを押さえてトップセールスを誇るなど、音楽業界ではすでに話題になっている。

リリースから間もなく始まった全国ライブツアーは異常な本数に及ぶものだが、その初日、8月25日神奈川・横浜F.A.Dでの公演は話題性に反して、意外なほどオーディエンスが少なかった。しかし、僕がとても感動したのは、その少ないオーディエンスに対しても彼らはいっさいの手を抜かず、こみ上げるような迫力のサウンド、大きなボーカル、そして真っすぐな視線で全力で演奏を終えたこと。ボーカルのTakiはMCで「ライブや音楽の力を本当に信じている」と語っていたが、その言葉にウソはないステージで、まるでヒストリック・ムービーのワンシーンのような貴重なライブだった。

このツアー以降、確実に全国区へ人気が広まるであろう彼らだが、「次世代ブレイク必至のバンドだから、今のうちに観ておいたほうがいい」ということだけで紹介するのは惜し過ぎる。「生」にこだわり、音楽に覚悟を決めたバンドマンの真のライブ…今の時代をつんざくような彼らのメッセージとサウンドが、彼らへの支持の拡大に繋がるのは当然で、オーバーではなく社会現象にさえ飛び火するのではないかと思った。上っ面の個性の尊重や、コミュニケーションツールなどのめざましい進化の反面で失った「生」ならではの大切なことを、Brandelがロックサウンドやライブで体現し、取り戻してくれる時代が来るかもしれない。

文:松田義人(deco)