3年前の秋、初めて気仙沼へ行って以来、あの街が好きになった。

   













なにしろ食い物が旨い。
「福よし」という居酒屋で食べたマグロの刺身もサンマの塩焼きもイワシフライも、
どれもこれもみな鮮度が良く、酒との相性も抜群だった。

   

 









 

   













カウンターに座り、料理人の話を聞きながら食べた料理がいまも忘れられない。
贅沢な時間をすごさせてもらったものだと感謝している。

私のような気仙沼ファン、東北ファンに、銀座に出現した気仙沼の店を紹介しようと思う。
「東日本復興応援プラザ」の2階にオープンした「銀座つながる食堂」である。
気仙沼をはじめとする東北産の食材を使った料理を提供している。
目的はその名のとおり復興支援。
 

   

 











(何かを食べて支援したいけど、味には期待してないよ)
と思う人がいるかもしれない。
だが、それは大きなまちがいである。
たしかに、お世辞にも小洒落た店ではない。けれどあなどってはいけない。
ビルの地下にある厨房でシェフが丹誠こめて料理を作っているのだ。

シェフは以前、某政治家のお抱え料理人だった経験と腕を持つ。
プライベートシェフだった男が、この店のためにメニューを考えた。
ブイヤベースカレー(800円)のスパイスは、シェフのオリジナルブレンド。
 

   

 











東北で水揚げされた小魚でとっただしを使っているのでコクがある。
これをアサリ入りのご飯にかけて食べる。
(ここでこんな本格的なカレーを食べられるとは)
別な意味で、期待を裏切ってくれるはずだ。
 

   

 











750円の弁当もシェフの手作り。
東北産の素材を使った、魚弁当と肉弁当の2種類がある。
魚弁当にはメカジキやサケなど、東北の旬の魚が登場する。
肉弁当の肉は、岩手が誇るブランド豚、岩中豚を使用している。
 

   

 









近年各地でご当地バーガーが話題だが、気仙沼でも震災前から食べられてきた。
カキバーガーとめかかつバーガーである。
 

   

 











前者は、松島のカキを使ったクリームコロッケ風バーガー。
とろりとしていて後を引く。
後者は、気仙沼産メカジキのフライをはさんだ一品。
共にバンズは、米粉(宮城県登米市産ササニシキ)を使っている。

宮城県松島町にある「松島さかな市場」では、数年前からご当地バーガーを提供していた。
銀座つながる食堂では、松島さかな市場から取り寄せた2種類のバーガーを
地下の厨房でシェフが調理したものを販売している。
シェフ手作りのサイドディッシュ(ピクルス)付きで600円。
 

   

 










当初、サイドディッシュにはラタトゥイユもあり、どちらかを選べた。
残念ながら、いまはピクルスだけ。シェフのラタトゥイユはすさまじかった。
ラタトゥイユもぜひ復活させてほしい。
 

   

 










店内に貼ってあるご当地バーガーのポスターがこれまた味があっていい。
とくにカキバーガー。このゆるキャラに癒される人は少なくないはずだ。
 

  



東北の味を食べ比べたら、デザートも食べたい。
シェフが考案したシナモンスティック(420円)がある。

   












アップル、ラムレーズン、クリームチーズ、ナッツをパイ生地で包んだ
シナモンスティックは、ここでしか食べられない「甘すぎない大人の新感覚スイーツ」。
 

   













帰りがけ1階にある「銀座いきなり市場」を覗いてみよう。

   

 











気仙沼のフカヒレを使ったスープや、
気仙沼のパン屋が作ったコッペパンなどが並んでいる。
 

   

 











東北の街が復活した日には、現地で旨いものをたらふく食べるとして
それまでは銀座で旨いものを買って食べて支援していきたい。

【店舗情報】
銀座つながる食堂
東京都中央区銀座5-2-1 銀座TSビル1F
営業時間:11時~19時
定休日:月曜 ※祝日の場合、翌日休業
※不定期にイベントが行われている。
詳細はFacebook および東日本復興応援プロジェクト from 銀座で。

東京五輪開催前の3歳の時、亀戸天神の側にあった田久保精肉店のコロッケと出会い、食に目覚める。以来コロッケの買い食いに明け暮れる人生を謳歌。主な著書に『平翠軒のうまいもの帳』、『自家菜園のあるレストラン』、『一流シェフの味を10分で作る! 男の料理』などの他、『笠原将弘のおやつまみ』の企画・構成を担当。