無線LANルータ販売時のポイントを語るエレコムの狩谷祐一氏

単身世帯を中心に、ネットワークをモバイルWi-Fiやスマートフォンのテザリングでまかなうユーザーが増えている。固定回線を引いていてもプロバイダが無線LANルータを支給するケースが多く、家電量販店での販売台数は若干の縮小傾向にある。 家電量販店やPC専門店、ECショップの実売データを集計する「BCNランキング」によると、2017年1月~12月の累計販売台数は前年比98.7%で、この傾向を裏づける。しかし、販売金額に目を向けると小幅ながら101.9%と伸びている。これはこれまでより高単価の製品が受け入れられていることを意味する。具体的には、どのような顧客が、どのような機能を求めて高単価製品を購入しているのか。エレコムの商品開発部 ネットワーク課 コンシューマNW開発チームリーダーの狩谷祐一氏に話を聞いた。

自覚ある「つながりにくさ」 自覚ない「セキュリティ意識」

現在、無線LANルータを購入するのが初めてという家庭は少数で、ほとんどが買い替え目的だ。狩谷氏は「今の無線LANルータに不満はあるはずなので、そこを聞き出すことができれば、納得していただける高単価製品を提案しやすい」と語る。

エレコムが販売時のポイントに挙げているのは「家庭のすみずみまで届くこと」と「セキュリティが簡単かつ強固に設定できること」。前者については、ユーザーの自覚がある課題といえる。「スマホだけでなくスマートスピーカーや監視カメラなど、ネットワークを経由する端末が急速に増えた。“IoT”という言葉も一般ユーザーに浸透しているので、家中で快適なネットワーク環境を構築したいという需要は、将来の導入を見据えたユーザーも含めて高い」(狩谷氏)。

一方、認識がまだ甘いのが「セキュリティ意識」だ。ネットワークから侵入する脅威はすでにPCやスマホだけでなく、スマートテレビなどのIoT機器にまで被害をもたらしているが、現時点ではこれらのセキュリティ対策はほとんどない。ネットワークの入口である無線LANルータを保護することは、数少ないIoT機器保護の手段だ。「自分は大丈夫、と考えていても、ファミリー世帯であれば小さい子どもが家庭の無線LANルータを使用することもある。売り場では、リテラシーがそこまで高くなくても安心して使えることの重要性を強調してほしい」。

DXアンテナと共同開発 第1号機の「WRC-2533GST」

エレコムが考える次世代の無線LANルータを代表するのが、17年10月に発売した「WRC-2533GST」だ。5GHz帯(11ac/n/a規格)で最大1733Mbps、2.4GHz帯(11n/g/b規格)で最大800Mbpsの高速通信が可能で、それぞれの通信帯で4×4の高感度内蔵アンテナを搭載する。注目したいのは、17年4月に買収したDXアンテナのノウハウが盛り込まれた第1号機であるということだ。

「DXアンテナの専門性の高い技術と実証施設が合わさることで、遠方まで電波を届かせる力が大幅に向上した」と狩谷氏が語るように、戸建ての2階・3階部分で従来機種と比較して平均30%以上もスピードアップした。

セキュリティにはトレンドマイクロの「悪質なウェブサイトブロック機能」を搭載。ネットワークの入口を保護することで、PCやスマホだけでなく、現状ではセキュリティソフトが存在しないスマートテレビやIoT製品の安全性も確保する。

「WRC-2533GST」は購入者の約6割が、セキュリティ機能を有効にしているという。これにはセットアップの工夫が奏功している。「他社製品はアプリでセットアップするものが多いが、あえてWebブラウザを採用し、テレビやアプリストアに非対応の端末からもセットアップができるようにしている」。年配のユーザーだとテレビしか操作できる端末がないケースもあり、重宝しているそうだ。

家族それぞれに合わせた機能も充実する。例えば、子どものネット接続時間を制限する機能。子ども向けを意識した最新スマホであれば端末自体に搭載しているが、親が使わなくなったスマホを子どもに家でWi-Fiにつないで使わせている場合が多い。Wi-Fiルータが搭載してあれば、端末を選ばない。

「もはや、つながることはあたりまえ」と狩谷氏。ユーザーが期待する水準が高くなり、通信速度や接続台数をフックにした提案だけでは弱くなっている。新生活シーズンは、回線も含めて見直すユーザーも多いので、2~3年先でも通用する最新モデルを提案するチャンスだ。売り場では新設したIoTコーナーで無線LANルータを展開するなど「これからの生活」をイメージさせた単価アップ施策もすでにみられるが、納得を引き出すために付加価値が生きるシチュエーションをしっかり伝えたい。(BCN・大蔵 大輔)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。

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