原作からの変更も見やすさに貢献

ドラマが原作と違う点は、まず半沢直樹の妻・花(上戸彩)のキャラクターがやや変更されていること。ドラマの花もハッキリとモノを言うタイプだが、原作よりも夫を陰で支えている印象が強くなっている。

これはもう一方的に男の理想を表現している感じだが、ドラマのメインは夫である半沢直樹が外で戦う内容なので、焦点がブレないようにするためには必要な変更だったと思う。この家庭の雰囲気にリアリティは必要ないし、実際、ドラマの花のキャラクターには癒やされてるお父さんたちも多いと思う。

半沢直樹の父親(笑福亭鶴瓶)に関する過去のエピソードや、半沢家の工場を窮地に追いやった相手も原作とは違う。これは、半沢直樹がより憎むべき強大な相手をつくることで対立構造をハッキリさせることと、第一部から第二部へのつなぎをスムーズにさせることを狙っての変更だと思う。これも今のところうまく機能している。

第一部は、支店長の浅野(石丸幹二)の失脚で十分にカタルシスは得られたし、大和田常務(香川照之)を最初から目立たせたことで、第二部への興味もつながった。金融庁の黒崎(片岡愛之助)を国税に出向している統括官として第一部から登場させたのもドラマのオリジナルだが、これも同じ効果を発揮していると思う。

もちろん、主演の堺雅人だけでなく、共演者も個性的で引き込まれる要素になっている。第二部への移行でキャスティングはかなり入れ替わったが、第一部の石丸幹二、緋田康人などの強力なメンバーに替り、第二部からは倍賞美津子や川原和久などが加わっている。

とくに伊勢島ホテルの羽根専務は、原作の男性から女性に変更されて倍賞美津子が演じているので、今後どういう雰囲気になるかは気になるところ。その伊勢島ホテルの湯浅社長は、笑福亭鶴瓶の息子・駿河太郎が演じているが、ここも原作とはちょっと違った雰囲気になっているので期待したい。

あと、東京本部での半沢直樹の直属の上司、内藤部長を演じているのは吉田鋼太郎。7月から8月にかけて、『半沢直樹』と同じ池井戸潤原作の『七つの会議』がNHKで放送されていたが、そこでも八角さんを演じていた。最近では『カラマーゾフの兄弟』の父親役をやっていた人だ。今回は八角さんやカラマーゾフの文蔵とはちょっと違うタイプの役なので、この吉田鋼太郎にも注目したい。

さて、こうなると第2部も盤石の体制でドラマは進行していきそう。今は一度話題になると、ツイッターなどで拡散されて、普段はドラマを見ない人まで見るようになるので、驚異的な視聴率を叩きだしたりすることもある。

『家政婦のミタ』がそのいい例だが、じつは『家政婦のミタ』の初回視聴率は、『半沢直樹』とほぼ同じの19.5%だった。そして、5話で初めて20%を超えて、最終回は40%を記録した。『半沢直樹』は2話から20%を超えて、すでに関西では30%以上になっているのだから、とっくに『家政婦のミタ』を上回るペースになっている。

話題満載の『半沢直樹』。その結末だけでなく、最終回の視聴率も今から楽しみだ。

 

たなか・まこと  フリーライター。ドラマ好き。某情報誌で、約10年間ドラマのコラムを連載していた。ドラマに関しては、『あぶない刑事20年SCRAPBOOK(日本テレビ)』『筒井康隆の仕事大研究(洋泉社)』などでも執筆している。一番好きなドラマは、山田太一の『男たちの旅路』。