報道陣に囲まれながら、事業継続の意思はあると強調した大塚COO(左端)

【日高彰の業界を斬る・2】


仮想通貨取引所・コインチェックからの「NEM(ネム)」流出事件は、発生から3週間あまりが経過した今も、サービス再開や被害者への補償時期が決まっていない。同社は2月13日、一時中止していた日本円の出金を再開したが、NEMを含むすべての仮想通貨の売買や引き出し、送金などは今もできない。流出した通貨とは関係ないユーザーも巻き添えにする形で、今もコインチェックのサービスは停止している。

金融庁に業務改善報告書を提出した2月13日の夜、コインチェックの大塚雄介取締役COOはマスコミの取材に対応したが、会見の場所は同社が入居するビル1階のロビー。その場に入りきれないほどの報道陣に囲まれながら、大塚COOが具体的な質問に対しては「お答えできない」を繰り返すという、異様な雰囲気の中で約20分の会見は終了した。

コインチェックの口座に仮想通貨を預けていたユーザーは、手持ちのコインが下落しても損切りさえできない状況が続いているが、困惑が続いているのは仮想通貨の投資家だけではない。同社の決済サービス「Coincheck Payment」を導入していた店舗では、ビットコインによる決済が行えない状況が続いている。

同社資料によると、Coincheck Paymentは国内店舗のビットコイン決済システムとして、2016年末時点でシェア99%と、圧倒的に高い市場シェアを獲得していたという。日本円出金の再開で、サービス停止前の売上げ分については日本円での引き出しが可能になった模様だが、決済についてはサービス再開時期はまったくの未定だ。

この間にも仮想通貨の価格は乱高下を繰り返しており、事件発覚後の2月上旬には最高値の4分の1近く、1BTC=65万円前後まで値を落としている。ただ、その後再び値上がりに転じており、本稿を執筆している2月16日には一時110万円前後まで息を吹き返している。

エンドユーザーも店舗もビットコインにはもうこりごりかと思いきや、市場の仮想通貨熱は冷めたわけではないようだ。ある飲食店の店主は、流出事件の報道の大きさで仮想通貨ユーザー層の厚さを認識したといい、「これだけお金に対して敏感な人たちが集まっているのなら、うちも今ビットコイン決済を導入したら、利益確定のために使ってくれるのでは」と話す。したたかな店舗経営者にとっては、仮想通貨の是非で社会的な議論が起きているタイミングがチャンスかもしれないというのだ。

bitFlyer、コインチェックに次ぐ大手取引所「Zaif」を運営するテックビューロは、2月16日から女優・剛力彩芽さんを起用したテレビCMの放映を開始した。コインチェックの被害者が多かった理由のひとつとして、同社による大量のCM放映が挙げられており、セキュリティよりも広告宣伝に優先投資をしていた姿勢は多くの批判を浴びた。しかしこの状況を見る限り、業界もユーザーも自粛ムードとはほど遠いようだ。(BCN・日高 彰)

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