ヤマダ電機LABI1高崎ではWindows 8が認知されたことで夏商戦は順調

群馬県高崎市の家電量販店では、常連客のスタッフへの信頼が厚く、スタッフが勧めた商品が売れていく傾向がある。そのような特性に着目して、全国で売れ行きが鈍いパソコンとパソコンソフト、インクジェットプリンタの売り方に絞って聞いた。その結果、お客様と積極的にコミュニケーションを図ってニーズを聞き出し、最適な商品をお客様に提案することで購入促進につなげているほか、POPや展示で商品のよさをわかりやすくアピールすることによって、商材の販売を前年並みまで押し上げていることが明らかになった。(取材・文/佐相彰彦)

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<売れ筋商品>

●【パソコン】

Windows 8の認知度が高まる 売れ筋のアピールで需要を喚起

デスクトップ/ノートともに、非常に厳しい状態が続くパソコン。高崎市の家電量販店も苦戦を強いられているが、何とか前年割れだけは回避しようと対策を講じている。

駅前の都市型店舗として最新機種の展示に力を入れているヤマダ電機LABI1高崎では、「夏商戦向けの新製品が登場して、徐々にではあるがWindows 8が認知されつつある」(新井克哉副店長)と判断し、各メーカーのモデルを全数展示。とくに、タッチパネルの最新モデルが売れ始めているという。

ビックカメラ高崎東口店では、「お客様に興味をもっていただくために、当店が勧めるベスト3のモデルを推薦の理由とともにアピールしたところ、常連のお客様がタッチ操作などの説明を求めてくるようになった」と、パソコン本体とソフトウェア・周辺機器などを担当する塚越大輔主任は反響を語る。また、タブレット端末としても使えるコンバーチブル型パソコンも人気で、「使用シーンなどをていねいに説明すれば販売が伸びる」としている。

コジマNEW高崎店では、「パソコンに必要な周辺機器やアクセサリを展示しているほか、各モデルの特徴をスタッフが手づくりしたPOPなどでわかりやすく説明している」(高野知也店長)という。

コモディティ(日用品)になったパソコンの販売状況は、確かに厳しい。しかし、高崎市の家電量販店は、あの手この手で新しいパソコンのよさを訴えて販売につなげている。

●【パソコンソフト】

わかりやすい説明が販売に結びつく 法人を固定客として確保する店舗も

パソコンソフトは、インターネットでのダウンロード販売が定着したことで、店頭販売が減少。最近はパッケージではなく、クラウドサービスの利用者が増え、店頭での販売はますます厳しくなり、売り場を縮小している家電量販店も少なくない。しかし、高崎市の家電量販店では、パソコンソフトの販売は堅調に推移しているという。

ビックカメラ高崎東口店では、画像処理ソフトの販売が好調だ。塚越主任は、「写真撮影が趣味のお客様が多く、高齢の方が購入していかれる。とくに、誰でも簡単に写真を加工することができるアドビの『Photoshop Elements』が人気を集めている」という。また、マイクロソフトの「Office」が「学生のお客様を中心に売れている」とのことだ。

ヤマダ電機LABI1高崎では、「セキュリティソフトで固定客を確保している」(新井副店長)という。セキュリティソフトは、最初はパッケージで購入しても、更新はインターネットで済ませる人が多い。しかし、LABI1高崎のお客様は、「ソフトの操作性や使い勝手だけでなく、スタッフにパソコン全体のセキュリティ対策を聞こうと、当店に来ていただいている」という。コミュニケーションを求めて来店しているわけだ。また、駅周辺に勤務する会社員が業務用で購入するケースもあり、「法人コーナーでパソコンソフトを販売したところ、評判を呼んだ」そうだ。

白物家電や理美容品で近隣の主婦層を獲得しているコジマNEW高崎店も、パソコンソフトに関しては、「近くのオフィスを構える法人がお客様」(高野店長)という。品揃えを充実させ、法人を固定客として確保したことによって、「周辺機器やサプライ品も売れるようになった」と満足げだ。

●【インクジェットプリンタ】

単価下落で買い替えの動き 高性能モデルが売れる

プリンタは、高性能モデルでも2万円を切る価格で購入できるようになったことで、買い替え需要が増えている。撮影が趣味のお客様が多いビックカメラ高崎東口店は、「写真をプリントする方が多く、きれいに残したいという理由で高解像度のモデルを購入される」(塚越主任)という。また最近は、主婦の間でスマートフォンで撮影した画像を印刷して交換することが流行しているようで、「省スペースモデルも売れている」そうだ。タッチパネルでの操作が簡単なことも、買い替え需要を促している要因という。ビックカメラ高崎東口店では、プリンタは「前年を割ることなく一定の台数を販売できる商品」と位置づけている。

コジマNEW高崎店では、「無線LAN機能があたりまえになったことで、ケーブルタイプのプリンタから買い替えるお客様が多い」(高野店長)という。ただ、プリンタは製品数が多く、「どのプリンタを購入すればいいのかと悩むお客様が多いので、スタッフがそれぞれの特徴をていねいに説明している」。プリンタコーナーでは、知識の豊富なスタッフを紹介する手づくりのPOPを天井に吊るし、お客様が相談しやすくした。

ヤマダ電機LABI1高崎でも高性能モデルが人気で、価格が手頃なこともあってキヤノンの「PIXUS MG6330」が売れている。

各店とも、プリンタに関しては、販売台数は前年並みでも、単価下落によって販売金額は前年を下回っている。しかし、家電量販店にとって、プリンタは消耗品のインクや用紙でリピーターを確保する商品。その意味で、一定の販売は以後の収益の確保につながる。

■アナリストに聞く「売れる理由」

パソコンの販売は、非常に厳しくなっている。7月の販売台数は、デスクトップが前年同月比59.3%、ノートが72.0%という状況だ。スマートフォンが普及し、パソコンへの依存度が低下するなど、個人情報デバイスの比重が変わってきた。これは、パソコンの位置づけを改めて提案していく必要があるということだ。例えば、スマートフォンと連携して、できることを訴える必要があるだろう。パソコンは、販売台数・金額は減少しているが、平均単価は上がっている。低価格だから売れるというわけではなく、新しい価値を提供していくことが重要になる。

パソコンソフトは、今年7月の販売本数は前年同月比99.2%と微減。販売金額は101.6%と健闘している。現在はセキュリティソフトが中心だが、パソコンの用途を生かすソフトが次々と登場してくることが望ましい。スマートフォンやタブレット端末では多くの便利なアプリが登場し、人気を博していることから、可能性は十分にある。

インクジェットプリンタは、販売の低迷が続いている。7月は、台数・金額とも1割以上も落ち込んでしまった。年賀状の需要が減少しているなど、紙への出力がますます減るなかで、どのように魅力を出していくかがカギになるだろう。

●家電激戦区「高崎市」を歩いて

お客様の声をしっかりと聞き、最適な商品を勧める──。多くの家電量販店が力を入れていることだが、情に厚い高崎市民を固定客として確保するには、日常会話のなかでの悩みを聞き出し、家電・デジタル機器で解決できることがあれば提案する接客が重要であることがわかった。気に入ったスタッフがいれば、お客様は何度も足を運んでくれる。固定客を確保している家電量販店は、堅調に業績を伸ばしているようだ。

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※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2013年9月2日付 vol.1495より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは