草なぎと太田、優しく強い信頼関係

撮影:稲澤朝博

草彅と太田のつきあいは長くて太い。「最初に会ったのは剛が子供のときだもんな」と太田は述懐するが、その後もバラエティ番組などで何度も顔を合わせ、草なぎ自身が語ったように、10年7月にはSMAPの19枚目のオリジナルアルバムでは表題曲『We are SMAP!』に歌詞を提供している(作曲は久石譲)。

その歌詞の中には、まるで現在の草彅や稲垣、香取にエールを送るようなフレーズが幾つもある。

「この冒険を繋げよう。」

「エンジンは、好奇心さ。科学でもなくて。
笑い声。歌の音。魔法のエネルギーさ。」

「あの日行けた場所の、遠くよりも遠く。
『行けるよ』ってキミが言ったんだ!
何度も。」

「先へ…」

今回の撮影現場で、草彅は奇しくも「この『クソ野郎と美しき世界』は未来に繋がっていくような感じがします」と公言している。それに、こんなに優しく力強いメッセージをくれる太田が監督なのだから、草なぎが全幅の信頼を寄せてついていこうと思うのも当然だ。次の言葉からもそのことが伝わってきた。

撮影:稲澤朝博

「映画全体のタイトル通り、僕が演じているツヨシはめちゃくちゃクソ野郎ですけど、“美しき世界”も夫婦愛や子供をめぐる家族愛という形でちゃんと表現しているので、太田さんってやっぱりスゴいなと思います。

それに太田さん特有のブラックショークが散りばめられていて、後になってその皮肉めいたところが分かってくるのも最高です。(稲垣)吾郎さんも(香取)慎吾も台本を読んで、“太田さんはやっぱりスゴいね”って褒めていたし、とてもやり甲斐がありますね」

それを聞いて、太田も「嬉しいですね。僕も監督が夢でしたから」と笑顔を見せ、「愛すべきは人間の営みだし、しくじった人間というのはやっぱり面白いですから」と持論を展開させた。

ところが次の瞬間、舞い上がってしまったのか、お笑い芸人の性なのか、「剛くんと尾野さんが現場に入った瞬間から恋人同士みたいだったので安心したんだけど、実は昨日、ラブホテルで一発やってもらおうと思っていたんですよ。必要なかったですね」と太田らしいいつものジョ―クを炸裂。

撮影:稲澤朝博

尾野に「そんなことを考えていたんですか?」と失笑をかい、草なぎからも「流石、名監督ですね。いま、そんなことを言うのは、園子温しかいないんじゃないですか?(笑)」と冷ややかな視線を浴びたが、そこでまたおかしな火がついて、「園子温には負けません。あいつには絶対負けたくない!」と本気と冗談が入り混じった妙な闘志を燃やしていたのが印象的だった。