トロント映画祭のピープルズ・チョイス・アワードに、スティーヴ・マックィーン監督の『12 Years a Slave』が選ばれた。トロントでの受賞作はオスカーにつながるケースが多く、この作品も、今後、大健闘が期待できそうだ。

カンヌやヴェネツィアと違い、審査員がいないトロント映画祭では、一般観客の投票で賞が決まる。トロントで受賞し、オスカー作品賞に輝いた例には『アメリカン・ビューティ』『スラムドッグ$ミリオネア』『英国王のスピーチ』などがあり、映画業界内では非常に重視されている存在だ。

『12 Years a Slave』は、19世紀のアメリカを舞台にした感動の実話。教育を受け、ミュージシャンとして裕福な暮らしをしていた黒人ソロモンは、出張先で拉致され、違う名前をつけられて奴隷として売られてしまう。残された家族に手紙を書きたいが、奴隷にとってはそれすら困難なことだ。ソロモンの最初のオーナーを演じるのは、ベネディクト・カンバーバッチ。ソロモンにひどく当たる次のオーナーは、マックィーン監督と『Hunger(日本未公開)』『SHAME-シェイム-』でも組んだマイケル・ファスベンダーが演じる。

プロデューサーのブラッド・ピットは『Hunger』を見て、「次の作品はぜひ僕らにプロデュースさせてほしい」とマックィーンにアプローチしたという。その段階ではすでに『SHAME-シェイム-』が動き出していたため、その次に当たる『12 Years a Slave』でピットはプロデュースと助演を兼任した。もし『12 Years a Slave』がオスカーを取れば、ピットも授賞式の舞台に上がることになるはずだ。『12 Years a Slave』は来年日本公開予定。

文:猿渡由紀