辻仁成が原作・脚本・演出を務める舞台『99才まで生きたあかんぼう』が2月22日、東京・よみうり大手町ホールで開幕。ある男の0才から99才までの人生を、村井良大、松田凌、玉城裕規、馬場良馬、松島庄汰、松田賢二のたった6人の俳優で演じるコメディ作品だ。開幕を前に、総通し稽古(ゲネプロ)が行われた。

舞台『99才まで生きたあかんぼう』チケット情報

物語は、村井が演じる「男」を軸としながら、笑いあり涙ありの人の一生を描いている。思わず出演俳優は6人だったことを忘れるほど、様々な登場人物が出入りする(松島は最多15役を演じる)。あかんぼうの時から青年、中年、老人と実に上手く年をとっていく主演の村井の演技はもちろん、俳優陣の変身ぶりにはぜひ注目してほしい。

泣きながらこの世に生まれた時。母親にオムレツの作り方を教わった時。初めて恋をした時。愛する人を失った時……。舞台中央の電光掲示板に表示される「年齢」を感じつつ、繰り返される日常の場面場面を鮮やかに切り取ったテンポの良い演出。SUGIZOの音楽に合わせて時折挟まるダンスシーンや、黒いマントとサングラスを身にまとった狂言回しの「神」の存在もいいアクセントになっている。「ネガティブなことが起こるのは試されていると思えばいい」、「一生懸命今を生きるがよい」などと、辻自身がおそらく実体験から感じた人生訓が随所に散りばめられており、きっと心に響く言葉や場面があるはずだ。

ゲネプロ前の囲み取材で、辻は「若い役者の方々とやるのは初めて。エネルギッシュで非常に演出をしていて毎日が楽しかった」と制作過程を振り返りつつ、「生まれて初めて書いたコメディ。今まで悲しいラブストーリーやシリアスが多かったけれど、吹っ切れて、人生笑い飛ばせという感じになってきた。若い彼らのエネルギーを借りて、『立ち直る力』みたいな感じの舞台にしたい」と見どころを語った。

主演の村井は「人の一生を描いている物語で、僕自身も年を取っている感じで面白い。出演しているのはたった6人だけれど、何十人も舞台上にいるかのような壮大な物語になっているので見に来てほしい」と話した。

東京公演は3月4日(日)まで。その後、名古屋、福岡、大阪を巡演。

文・写真:五月女菜穂

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