ピーター・ストレイカー ピーター・ストレイカー

「ロンドン・フリンジの鬼才」と謳われたケン・ヒルが脚本と作詞を手掛けた世界的ヒットミュージカル『オペラ座の怪人』ケン・ヒル版が、この冬、9年ぶりに再上陸する。タイトルロールを務めるのは、1991年から世界中で同役を演じてきたザ・ファントム役者、ピーター・ストレイカー。過去4度の日本公演も“皆勤賞”、「大好きな日本でクリスマスを過ごせるのが楽しみ」と話す彼に、作品の見どころを訊いた。

ミュージカル『オペラ座の怪人~ケン・ヒル版~』チケット情報

ストレイカーはジャマイカ出身。1968年に『ヘアー』ロンドン初演版でウエストエンド・デビューを果たし、ケン・ヒル版『オペラ座の怪人』が初演された頃には、すでに演劇界で確固たるポジションを築いていた。だがファントム役は、その彼からヒルへの直談判によって実現したのだという。「ファントムはほとんど姿を現さないから、僕には役不足じゃないかと言われたよ。だけどどうしてもやりたくて」とストレイカー。

そこまでやりたかった理由については、「だってタイトルロールだから(笑)」とおどけて見せるが、オペラのアリアにヒルが歌詞をのせるという発想が、フレディ・マーキュリーが惚れ込んだシンガーという一面も持つ彼のチャレンジ魂に火をつけたことは想像に難くない。音楽について話を振ると、「ビゼー、グノー、オッフェンバック…偉大な作曲家の音楽に、詞がうまく融合している。歌うのは大変で、公演中はうかうか飲みにも行けないけど(笑)、だからこそエキサイティングなんだ」と実に楽しそうに話してくれた。

『オペラ座の怪人』といえば、ロイド=ウェバー版やコピット&イェストン版も人気だが、世界初のミュージカル化はこのケン・ヒル版。“元祖”として、常に比較して語られることを快く思っていないのではないかと思いきや、「比べるのは健全なこと。いろいろ観て、観客自身がどれが好きか決めてくれればいいと思っているよ」と淡々としたもの。その上でケン・ヒル版の魅力として、原作に忠実であること、ユーモアにあふれていること、シンプルな演出であることを挙げてくれた。「大がかりな仕掛けがあるわけじゃないから、僕ら役者が観客に訴えかけないといけない。難しいけれど、やりがいを感じるよ」

役と自身との共通点を尋ねると、「僕も邪魔者がいたら殺しちゃうかってこと!?」と大笑いしてから、「でも全く共感できないわけじゃないんだ。彼をああいう行動に駆り立てたのは愛だったということを、きちんと伝えたいと思っています」と真剣モードに。その圧巻の歌声が紡ぐ“歪んだ愛”は、私たちの胸に切なく迫ってくるに違いない。

公演は12月19日(木)から29日(日)まで、東京国際フォーラム ホールCにて。チケット発売中。

取材・文:町田麻子