9月20日、iPhoneの新モデル「iPhone 5s」「iPhone 5c」が発売された。新たにドコモも取り扱いを開始し、iPhoneを巡る争いは、そのまま携帯電話事業者(キャリア)のシェア争いに直結する。今回は、速報として家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」をもとに、「iPhone 5s/5c」に限ったキャリア別販売台数シェアをまとめた。

●「iPhone 5」を上回る好調な滑り出し 「iPhone 5s+5c」で1.5倍

「iPhone 5s/5c」は、ソフトバンクモバイル、KDDI(au)、NTTドコモの3キャリアが販売する。「iPhone 5c」は事前予約を受け付けていたが、「iPhone 5s」は、各キャリアとも事前予約を一切受け付けなかった。こうした事情もあり、「BCNランキング」によると、新iPhone(iPhone 5s+5c)の発売後3日間(9月20~22日)の販売台数は、「iPhone 5」の発売後3日間の販売台数の約1.5倍に達した。内訳は、指紋認証機能を搭載した「iPhone 5s」が83.2%、「iPhone 5c」が16.8%。「iPhone 5s」だけでも、「iPhone 5」を上回っている。

●「5s」も「5c」もソフトバンクモバイルがシェア1位 ドコモとauは僅差

「iPhone 5s」と「iPhone 5c」を合わせたキャリア別販売台数シェアは、ソフトバンクモバイル44.7%、ドコモ27.8%、au27.5%。国内初代モデル「iPhone 3G」から、5年以上にわたって販売してきたソフトバンクモバイルがトップの座を守った。

「iPhone 5s」に限ると、ソフトバンクモバイルのシェアは45.9%にアップし、初参入のドコモは27.4%、auは26.7%だった。同様に、「iPhone 5c」に限ると、ソフトバンクモバイル(38.5%)、au(31.7%)、ドコモ(29.8%)の順となり、こちらは僅差でauが2位につけた。「iPhone 5s」と「iPhone 5c」の販売台数の差は4.9倍。予想通り、ハイエンドモデルの「iPhone 5s」に人気が集中した。「iPhone 5c」は、発売直後に最新モデルを購入する層ではなく、欲しい時に、自分に合ったものを購入するような層がターゲット。発売から少し経つと、傾向は変わってくるだろう。

「iPhone 5s/5c」の発売1週目に当たる9月第3週(9月16~22日)の携帯電話全体の機種別ランキング1位は、シェア7.5%でソフトバンクモバイルの「iPhone 5s」の32GBモデル。2位には、0.1ポイント差で、同じくソフトバンクモバイルの「iPhone 5s」の64GBモデルが続いた。また、新iPhoneのうち、ドコモは「iPhone 5s」の64GBモデル、auは「iPhone 5s」の32GBモデルがトップ。「iPhone 5」を含め、1位から9位までiPhoneシリーズが独占し、「iPhone 5」を含むiPhoneシリーズの販売台数シェアは、携帯電話全体の66.9%、スマートフォン全体の77.1%に達した。

●MNP・学割・下取り……シェア争いの鍵を握るキャンペーン

発売1週目は、約2年前の「iPhone 4S」、1年前の「iPhone 5」に続いて、ソフトバンクモバイルが制した。ソフトバンクモバイルは、「ダブルLTE」と名づけた2.1GH帯と1.7GHz帯(イー・モバイル)を下り最大75Mbpsへ高速化し、「倍速ダブルLTE」と命名。「つながりやすさNo.1」や「倍速ダブルLTE」といったキャッチーなコピーで良さを訴えるネットワークや、展開中のさまざまなキャンペーンが市場に評価されたようだ。

各キャリアとも、自社の契約数を増やし、他社の契約数を減らすMNP(携帯電話番号ポータビリティ)利用者を優遇している。ドコモが学生を対象としたキャンペーン「ドコモへスイッチ学割」を打ち出すと、対抗するようにソフトバンクモバイルは「のりかえ学割」、auは「U22 au にかえる割」を発表し、それぞれ9月20日から開始した。対象者や条件、割引金額などは若干異なるが、「学割」を含むMNP向けキャンペーンの内容は、各キャリアともほぼ同じ。例えばソフトバンクモバイルの場合、全年齢を対象とした「バンバンのりかえ割」を適用すると合計2万3520円(「基本使用料2年間0円」の特典を選んだ場合)、学生を対象とした「のりかえ学割」を適用すると合計7万3080円、通常より安くなる。加えて、ソフトバンクモバイルは、独自の施策として、iPhone 4S以前のiPhoneユーザーなど向けに、パケット通信料を1年間(学生は2年間)、毎月1050円割り引く「かいかえ割」を実施し、既存ユーザーの引き止めにも抜かりがない。

ドコモの参入によって、データ通信中心のイー・モバイルを除いて、どのキャリアのユーザーでも、MNPを利用せずにiPhoneを利用できる環境が整った。同時に、キャリアに紐づいていた「iPhoneプレミアム」がなくなり、各キャリアは、端末代を含めた料金やネットワーク環境、独自サービスなどによって、ユーザーから「選ばれる」立場になった。学割や下取りなどのキャンペーン合戦が示す通り、キャリア間の競争はますます激しくなりそうだ。(BCN・嵯峨野 芙美)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。

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