<家電激戦区を歩く>ネットショップ(2) 家電量販店で3000億円規模 実店舗とネットの融合を模索

2013.9.25 11:6配信

家電量販店のネット通販市場は、約3000億円の規模といわれている。メーカー直販サイトと、マーケットプレイス(ショッピングモール)を含むアマゾンジャパンもそれぞれ同程度の規模で、三者が激しい競争を繰り広げている状況だ。家電量販店は、店舗での商品受け取りサービスや設置サービスなど、実店舗をもつ強みを生かして差異化を図っている。(取材・文/佐相彰彦)

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●専業者にはない価値を提供 実店舗スタッフによるサービス対応も

現在、家電量販店のネット通販で最も売り上げが大きいのは、上新電機のネットショップ「Joshin web」だ。これに、ビックカメラの「ビックカメラ.com」、ヨドバシカメラの「ヨドバシ・ドット・コム」、ヤマダ電機の「ヤマダ電機WEB.COM」などが続く。家電量販店のコンサルティングサービスを手がけるクロスの調査によれば、2012年の国内ネット通販家電市場は約9100億円で、そのうちの約3割、約3000億円が主要家電量販店のネットショップによるものという。

残りの約6100億円は、マーケットプレイレスをもつアマゾンジャパンやメーカーの直販サイト、激安を売りにしたネット専業者などだ。実店舗とは異なり、ネットの世界では家電量販店同士よりも、ほかのネットショップとの競争が激しくなっている。

家電量販店がネット通販で力を入れているのは、実店舗というネット専業者にはない価値を通じて、お客様を増やすこと。その一つがポイントサービスの連動だ。ヤマダ電機やビックカメラ、ヨドバシカメラ、上新電機、エディオンなどポイントカードを発行している家電量販店は、自社のネットショップで購入した商品に対してもポイントを付与して、それを店舗とネットショップのどちらでも使えるようにしている。

配送に関しても工夫している。ネットショップの商品は、届け先の近くにある実店舗から配送することで短納期を実現。また、エアコンや冷蔵庫など大型商品に関しては、実店舗の専門スタッフがお客様の家を訪問して工事や設置などを行う。例えば、ヤマダ電機は、15時までに注文すれば、その日のうちに届ける「社員お届けサービス」を提供している。実店舗のスタッフが対応するので、お客様と顔なじみのスタッフが届けることもあり、安心できるサービスとして好評だ。

さらに、ヤマダ電機やケーズデンキなどは、実店舗同様、ネットショップで購入した商品に無料長期保証をつけている。ネットで購入した商品が故障したときには、家の近くにある店舗に持ち込めば修理を受け付ける。

ネット通販市場の激しい価格競争に打ち勝つために、「最低価格保証」を採用しているのがエディオンだ。これは、指定商品がエディオンネットショップよりも他の大手家電量販店のネットショップのほうが安く販売している場合、お客様が注文前に専用メールアドレスで問い合わせると、現金値引きやポイント還元などで対応するサービスだ。

●オムニチャネルの構築へ ビジネスモデルの変革が必要

ネット専業者という競合との対抗策として、実店舗を生かしたネットビジネスを手がけている家電量販店にも、もちろん課題が残る。それは、「オムニチャネル」への取り組みだ。オムニチャネルとは、ネットショップやスマートフォン用アプリ、実店舗など、複数の顧客接点で、デジタルとリアルの融合で顧客満足度を高めること。家電量販店がオムニチャネルを実現すれば、ネット専業者にはない大きな武器になるはずだ。

ヤマダ電機は、ウェブチラシを使って店舗に誘導するだけでなく、レビューサイトの「ピーチクパーク」でお客様から寄せられた商品評価を掲載。スマートフォンでも情報を収集でき、ユーザーが店舗に来店してピーチクパークで得た情報をもとにスタッフに質問するというサイクルを構築しようとしている。

ヨドバシカメラは、スマートフォンアプリ「ヨドバシショッピングアプリ」を提供。ヨドバシ・ドット・コム同様、オンラインで注文できるだけでなく、各店舗の在庫状況も把握できる。近くにヨドバシカメラの店舗があれば、すばやく希望の商品が手に入るわけだ。

オムニチャネルの実現には、実店舗とネットショップの販売や運営に加えて、物流やサービス、分析、販促などをうまく組み合わせることが重要になる。当然、これまでのビジネスモデルを変える必要があり、取り組むには相応の覚悟が必要だ。しかし、オムニチャネルの構築によって、例えばタイムセールの告知やクーポンの発行による実店舗・ネットショップへの誘導は、これまでのテレビCMや新聞の折り込みチラシなどでの情報発信と比較して、大きな効果をもたらすはずだ。

●ビッグデータの有効活用を 実店舗の成長にも貢献

家電量販店がネット通販の拡大を図るとき、もう一つ課題になるのが、ページ閲覧や商品購買などの履歴データをベースにしたビッグデータの活用だ。

アマゾンジャパンや楽天などの大手ネットサービス事業者は、閲覧・購買履歴を分析して最適な商品を勧めるなど、データから顧客の動向を分析した販売促進には一日の長がある。しかし家電量販店には、ネットの購買だけでなく、実店舗でのポイントカード利用状況を含む膨大なデータがある。このデータを生かすことができれば、大手ネットサービス事業者に負けない顧客へのサービスが展開できそうだ。

また、ビッグデータの分析によって、これまでにはなかった新しい販売促進策を講じることもできる。例を挙げれば、スマートフォンのGPS機能によって、店舗付近に来たお客様へのクーポン発行や、スマートフォン所有歴2年以上のお客様への新製品情報提供などが考えられるだろう。また、お客様の年齢やライフスタイルに合わせて、最適な広告を展開することもできる。お客様個人に対するピンポイントのタイムリーな提案によって、顧客満足度を高めることができるわけだ。

家電量販店のビッグデータは、商品開発にも生かすことができる。お客様の声をメーカーに伝えることや、プライベートブランド(PB)商品の開発などで、他社との差異化を図ることもできる。

実店舗での販売が主力の家電量販店は、ネットショップだけに力を注ぐことは難しい。しかし、ネット通販の拡大には、売上増だけではないメリットがある。大手ネットサービス事業者に比べればまだまだ小規模だが、もっているビッグデータの質は高い。この有効活用は、実店舗の成長にも大きく貢献するはずだ。

→ネットショップ(3)に続く(2013年10月1日掲載)

※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2013年9月16日付 vol.1497より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは

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