「じゃん」はどこから来て、どこへ行く? 

関東発祥ではないという「じゃん」。ではどこから来たのだろうか?

1905年に山梨県で「じゃん」が使われていた記録があり、山梨県が発祥地と考えられている。それから、1940年代の静岡での空襲の記録に会話が記されていて、その中に「じゃん」が出てくる。静岡県清水市が舞台のマンガ、ちびまる子ちゃんの中でもおばあちゃんだけ「じゃん」を使うことがあるそう。東海道線各駅で調査した結果でも、静岡県で早く広がったと見られる。

このような資料から、横浜よりも前に東海地方で使われていて、東海道を通って横浜に入ってきたと考えられる。

横浜の港や宿場町を通ってきたものが、東京までたどり着き、そこから関東、全国区に広がるケースが多いのだとか。

横浜で「じゃん」が使われるようになり、広がったのは1960年代頃から。60年~70年代にかけて近郊にも広がり、品川区や太田区で使われていた記録もある。まだその頃は、足立区や板橋区では使われていなかったので、横浜に近い方面から東京に広がったと思われる。
 

今では広島県でも使われることが増え、平成16年の観光用ポスターのキャッチコピーに「ええじゃん広島県」と書かれたことがあった。かつては、30年前頃に瀬戸内の女学生が「じゃん」を使っていた記録も残されている。

これは意外。全国に広がっているようだ。

同じように「横はいり」も中部地方で使われていたものが、横浜に入ってきたものだという。
東京では「ズルコミ」と言っていたとか。

 

それでは、なぜ横浜発祥というイメージが付いたのだろうか?

井上先生に方言の定義として伺ったように、言葉が方言として定着するには、その言葉を使う人数が重要となり、大人数で使わなければ確立されない。

「じゃん」は、横浜では昭和初期から使われ始め、だんだんと定着し1980年代に流行した。横浜のように、昭和の高度成長期にこれほどの大都市に発展したケースは珍しく、「じゃん」を使う人数も多かった。そのため方言として定着したと考えられるそうだ。

また、80年代は港町やロックバンドの横浜銀蝿に憧れる人も多く、全国的に「横浜はかっこいい」という印象があった。そんな中、自信を持って「じゃん」を使う横浜の人を見て、横浜発祥というイメージが強くなったのではないかとのこと。