ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ (C)Schott Promotion / Peter Andersen ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ (C)Schott Promotion / Peter Andersen

ドイツの作曲家ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ(1926~2012年)の没後1年を記念し、沼尻竜典指揮・東京フィルハーモニー交響楽団が、ヘンツェ作品を特集する演奏会を開催する。

東京フィルハーモニー交響楽団「没後1年 今ここでしか聴けない『ヘンツェ』特集」の公演情報

1926年、ドイツのノルトライン=ヴェストファーレン州生まれのハンス・ヴェルナー・ヘンツェ。ファシズム体制下で幼少時代を過ごし、第二次大戦中の1943年には兵役のため東部戦線に招集され、イギリス軍の捕虜となっている。大戦終結後、新進作曲家として脚光を浴びるも、やがて左翼思想の影響を受けて政治的なメッセージ性の強い作品も多数発表。特に、ベトナム戦争の激化に伴う反戦運動が世界的に広まった1960年代後半以降は、その傾向は強まり、冷戦時代のキューバに滞在して研究や創作、教育活動を行っていた。

伝統的な様式と前衛的な手法を巧みに織り交ぜた作風は極めて多彩。新古典主義から十二音技法、前衛的様式に至るまで、種々の書法を取り入れ、オペラ、バレエ、交響曲、室内楽など、幅広いジャンルの作品を発表。特に現代オペラの分野では第一人者と評価され、音楽界における最も影響力のある作曲家のひとりとして活躍した。

東京フィルがヘンツェ作品を特集する演奏会のプログラムは、初期の「ピアノ協奏曲第1番」(日本初演)と後期の「交響曲第9番」。「ピアノ協奏曲第1番」はヘンツェ24歳の時の作品で、ストラヴィンスキーやシェーンベルクを想起させる作風の楽曲だ。日本初演のソリストは、小菅優が務める。一方、後期の大作「交響曲第9番」は、あのベートーヴェン以来の声楽付き第9交響曲。東西ドイツ統一後に書かれた作品で、祖国ドイツを題材とし、「ナチス・ファシズムがもたらした時代の恐怖に抵抗し、思想の自由のために生命をかけた人々への最大級の賛辞」だとヘンツェ自身が述べている。

東京フィルハーモニー交響楽団「没後1年 今ここでしか聴けない『ヘンツェ』特集」は、10月10日(木)に東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアルで開催。チケットは発売中。