宝塚歌劇月組公演『カンパニー -努力(レッスン)、情熱(パッション)、そして仲間たち(カンパニー)』、『BADDY(バッディ) -悪党(ヤツ)は月からやって来る-』が2月9日、兵庫・宝塚大劇場で開幕した。

宝塚歌劇月組『カンパニー -努力(レッスン)、情熱(パッション)、そして仲間たち(カンパニー)-』/『BADDY(バッディ)-悪党(ヤツ)は月からやって来る-』チケット情報

第一幕の『カンパニー』は、2017年に発行された伊吹有喜の小説「カンパニー」を原作にしたミュージカルで、主人公は製薬会社の青年サラリーマン・青柳誠二。愛妻を亡くし、生きる希望を失った青柳が、出向先のバレエ団で公演を成功に導こうと奮闘する姿を、ハートウォーミングに描いた物語だ。平凡なサラリーマンが主人公の現代劇だけに、華やかな衣装や派手なパフォーマンスで魅せる部分は限られているが、その分、“芝居”で魅せる。「努力、情熱、仲間がそろえば、希望は必ず見えてくる」など、要所に宝塚歌劇の舞台に立つ自分たちに繋がる言葉もあり、一人ひとりが丁寧に言葉を届けている。

トップスター・珠城(たまき)りょうが演じる青柳は、空手技を使ってスリを捕まえるなど、真面目で正義感が強いが、奥手な男。バレエの“バ”の字も知らない青柳が、悩みや問題を抱える者たちと真っ直ぐに向き合う。その気持ちが一人ひとりの意識を変え、仲間たちの絆が強くなっていく。爽やかな佇まいに、ナチュラルな存在感と周囲を引き寄せる人間性は、珠城にピッタリとはまっている。トップ娘役・愛希(まなき)れいかは、アルバイトをしながらバレエ・ダンサーをしている高崎美波役。実力はあるのに本番に弱い一面と、自分の思いは真っ直ぐに伝える積極的な一面を持つ女性を、愛嬌たっぷりに演じている。世界的プリンシパルの高野悠を演じる美弥るりかも、クールで心を開かない高野の心情の変化を繊細に表現。美しく、色気のある佇まいに目を奪われる。ほか、等身大の物語だからこその人間味あふれる多彩なキャラクターを、それぞれが好演している。

第二幕のショーは、演出家・上田久美子の初のショー作品。まだ稽古中のときに珠城が「想像を超えるショーになると思います」と自信たっぷりに語っていたように、これまでの宝塚歌劇では観たことのないようなユーモアあふれるステージに仕上がっている。ストーリー仕立ての内容で、珠城が月から地球に乗り込んでくる大悪党バッディ、愛希が地球の秩序を守る女捜査官グッディに扮する。『カンパニー』で見せた誠実な姿から一転、サングラスをかけて常にタバコをくわえ、キザにふるまう珠城。コミカルな場面では表情豊かに楽しませてくれる。美弥は中性的な妖しい雰囲気をまとったキャラクター。『カンパニー』とのギャップも楽しい月組のステージで、珠城をはじめ月組生の新たな魅力を発見できるはず。

兵庫公演は3月12日(月)まで。東京公演は3月30日(金)から5月6日(日)まで東京宝塚劇場にて。