10月1日から5日まで、千葉・幕張メッセで開催している国内最大の電機/ITの総合見本市「CEATEC JAPAN 2013」には、自動車メーカーが4社出展し、最新のテクノロジーがもたらす新しいカーライフを紹介している。

●人と調和する「優しい」設計のパーソナルモビリティ

本田技研工業が「屋内にもモビリティを」というテーマとともに紹介したのは、パーソナルモビリティ「UNI-CUB」。一人用の小型移動機械といえばセグウェイのような立ち乗りの二輪車をイメージするが、「UNI-CUB」は椅子に腰をかけたようなリラックスした体勢で乗ることができ、わずかな体重移動だけで360°自在に移動する。

2009年に公開したパーソナルモビリティー「U3-X」に、「ASIMO」などのヒューマノイドロボット研究で培ったバランス制御技術を適用。全方位駆動車輪機構と組み合わせることで、体の傾け具合によって直感的に方向や速度を調整する仕組みを開発した。ハンズフリー操作や足つきのよさを取り入れることで、安全性が向上し、搭乗者だけでなく、周囲の人にも配慮している。

開発のコンセプトは、人が行き交う空間との親和性。人と同じような全方位への自在な動き、搭乗者のパーソナルスペースに収まるコンパクトなサイズ、バリアフリー空間にも対応する安心設計で、人と社会に調和するモビリティをつくり上げた。

●「人・街・社会」をつなぐ、新しい都市型カーシェアリング

トヨタ自動車は、超小型電気自動車「RIDE COMS」と電動アシスト自転車「RIDE PAS」を利用したカーシェアリングシステム「Ha:mo RIDE(ハーモライド)」を紹介。都市内の近距離移動ニーズに対応した「ちょっとだけ乗る」という手軽なカーライフを提案した。

スマートフォンで予約すれば、近くの車両ステーションで簡単に「COMS」「PAS」をレンタルできる仕組みで、利用後は目的地付近の車両ステーションで乗り捨てることができる。ID認識やキーロック/解除はSuicaなどのプリペイドカードが対応。スマートフォンを運転席にセットすれば、カーナビとして目的地までの道中をサポートしてくれる。

COMSの料金は、最初の10分が200円、以降は走行時1分ごとに20円、降車時1分ごとに1~2円が加算される。駐車場代、燃料代は一切かからない。

「Ha:mo RIDE」は、現在、愛知県豊田市で実証運用中。10月中に「COMS」を100台、「PAS」を100台、車両ステーションを21か所に増やす計画だ。また2014年には、一人乗りのパーソナルモビリティとして開発したコンセプトカー「i-ROAD」を「Ha:mo RIDE」に投入する予定。

●日産の自動運転技術、2020年の実用化を目指す

自動車メーカーが出展している隣のホールでは、試乗のためのデモコースがある。ここで目を引いたのが、日産自動車が行っていた自動運転技術のデモンストレーションだ。自動運転とは、障害物を回避しての走行や車線変更、標識の認識などを自動で行う技術。日産は、2020年までに自動運転技術を搭載した自動車の実用化を目指している。

デモンストレーションで走行した車両は、日産のEV(電気自動車)「リーフ」をベースに製作。五つのカメラと五つのレーザースキャナを組み込み、360°の状況をリアルタイムに認識しながら自動運転する。

走行中の車内の様子はコース外からモニタリングでき、映像ではステアリングが自動で左右に動き、クルマの舵を取る様子が確認できた。周囲に危険がない状態のときはステアリングが青く点灯し、障害物を検知したときは赤く点灯する。車両底部に備えたライトにもこの安全性を示す色の変化は反映するので、周囲を通行する人やくるまを認識することができる。

デモ用コースには一時停止の標識を配置していたが、自動運転技術を搭載したクルマは交通ルールをしっかり把握し、状況に応じて正しい行動を自動判断する。交差点では、周囲の走行する車両を検知して停車、相手の車両が発進したことを認識、安全を確認して発車、という一連の判断を人の指示なくスムーズにこなしていた。

日産が開発している自動運転技術は、すべての運転動作の自動化を実現したシステムだが、人間がいつでも運転に介入できることを前提にしている。運転の楽しさを奪うことなく、人為的ミスによる事故や長距離運転のストレスを解消することが自動運転技術の担う役割だ。2014年には、「リーフ」の生産拠点である神奈川県の追浜工場に専用コースを設置する予定。公道での実証実験とあわせて実用化に向けた開発を進めていく。