2013年に入り、ノートPC市場の台数伸び率(前年同月比)はマイナス幅が次第に拡大している。一方、単価は12年10月の6万5500円を底に上昇が続く。タッチパネルの搭載が本格化するなど高付加機能が単価上昇に結びつく要因だ。

12年12月の年末商戦で精彩を欠いたノートPC市場は、13年に入っても回復の兆しはなく、夏商戦も振るわず、台数伸び率のマイナス幅拡大に歯止めがかからない。しかし、単価の推移をみるとモデルチェンジによる多少の上下動はあるものの、長いスパンでみると単価の上昇が続いている。12年10月と13年9月を比較すると、6万5500円から26.4%も上昇、8万2800円に達した(図表1)。

単価上昇の裏には、円安による部材の高騰もあるが、高付加機能の搭載が進んでいることが分かった。主な高付加機能として「タッチパネル(タッチ)」「高精細ディスプレイ(FullHD)」などの搭載が挙げられる。まず、「タッチ」をみると、Windows 8搭載PC発売以降、台数構成比が上昇している。12年10月時点ではタッチパネルが供給不足に陥り、搭載PCの供給は潤沢さを欠く状況にあった。しかし、供給不足が解消され始めると構成比は急増、直近9月では36.2%と販売台数のうち3分の1以上が「タッチ」対応となった(図表2)。9月の単価を比較すると、「タッチ」非対応は7万6300円だが、対応製品は10万3500円と約2万7200円(31.4%)もの単価差がある。

動画や静止画のフルハイビジョン(解像度が1920x1080以上)に対応が進む中、ノートPCにおいても「FullHD」に対応する製品が増加している。動画や静止画が綺麗に表示できることや、同じ画面サイズでも表示できる情報量が増える、などの利点があるためだ。現在では市場の1割の構成比に過ぎないが、「FullHD」非対応が8万1700円であるのに対し、対応製品は12万600円と価格差は実に1.5倍近い開きがあり、単価の上昇につながっている。

ノートPCの市場規模縮小は、タブレット端末市場やスマートフォン市場の拡大が影響を及ぼしていると考えられる。モバイルデバイスとの差別化を図るため、パソコンだからこそ可能な、高付加機能の搭載が本格化し始めている。しかし、高付加機能による単価上昇によって顧客離れが加速する危険性は高い。モバイルデバイスとどのように使い分けをするのか明確な提案を行ない、市場の縮小を食い止めることが急務だ。(森 英二)