宮沢りえが虚実ないまぜで演じる、美輪明宏の波乱の半生

2013.10.8 15:20配信
NODA・MAP第18回公演『MIWA』 NODA・MAP第18回公演『MIWA』

野田秀樹作・演出によるNODA・MAP第18回公演 『MIWA』が10月4日、東京芸術劇場で開幕。3日にゲネプロが行われた。本作は美輪明宏の半生をフィクションとして描くもので、宮沢りえが主人公“MIWA”を演じる。

NODA・MAP『MIWA』チケット情報

物語は、MIWA誕生前夜に始まり、その故郷・長崎と東京を舞台に展開していく。スクリーンの裏側から映画を見た幼少時代、初めての恋、戦争の爪痕、銀巴里ならぬ“ロンパリ”でのショー、MIWAの中に蘇る天草四郎と異端分子の反乱……。現在に至るまでの近代日本の歴史が、虚実ないまぜで、万華鏡のように鮮やかに綴られていく。消えてはまた現れる母や恋人の姿は、象徴的・運命論的でもある。折々には『メケメケ』『ヨイトマケの唄』『愛の讃歌』などの名曲が挿まれ、人生を糧に深く豊かに育まれる歌の世界を示す。

言葉遊びや引用・比喩など、様々な趣向を散りばめた野田ワールドは今回、MIWAの多面性や、世界の複雑さを浮かび上がらせる。その他の登場人物の役名・役柄もひと筋縄ではいかない。MIWAが愛した赤絃繋一郎(瑛太)、MIWAの母ほかを担うマリア(井上真央)、ふたつの世界の狭間にいる通訳(小出恵介)、MIWAの理解者である作家オスカワアイドル(野田秀樹)、ボーイ(浦井健治)、負け女(青木さやか)、半・陰陽(池田成志)、そして、MIWAと密接な関係性にある安藤牛乳(古田新太)。それぞれが強烈な個性を発揮しながら絶妙なアンサンブルを形成し、見応えがあった。さらに、豪華メンバーによる声でのカメオ出演も。

そんな中、何より胸に迫るのは、MIWAが辿る人生の壮絶さ。幾多の苦難に傷つき、倒れながらも、立ち上がり、一層大きく羽ばたく不死鳥の如き姿に、観る者の心は打ち震えずにはいられない。全身全霊で演じる宮沢は圧倒的で、凄烈な美しさを放っていた。

野田が現代に生きる人物を題材とするのは、本作が初めて。記憶に新しい史実も多いが、表層的になぞって綺麗事で済ませるような手法は取らず、全てを野田独自の視点で、時に怒りや風刺を効かせながら表した。表と裏、男と女、現実と妄想、自分の中のもうひとりの自分といった“二元”はどう乗り越え得るかという命題に挑む作品でもあった。MIWAの原風景を含め様々な情景を作り出す堀尾幸男の美術も出色。劇世界は一見入り組んでいるようで、観終われば胸に残るのは、愛や魂を巡る根源的な問いかけばかり。シンプルで熱い感動が、劇場中を包み込む。

11月24日(日)まで東京芸術劇場 プレイハウスにて。その後、11月28日(木)から12月1日(日)まで大阪・ シアターBRAVA!、12月6日(金)から8日(日)まで福岡・北九州芸術劇場 大ホールで公演。

取材・文:高橋彩子

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