究極の質問「それってあなたを幸せにするの?」

自分に向き合うことは、時につらいこともあります。ましてや、子育て中は、ママという隠れ蓑を使って、本当の自分を出さないことも可能な時期です。本当の自分が、自分が認めたくない自分なら、なおのこと。

ばなな先生「それがつらい人にはつらいんでしょうね。今まで本来の自分として生きてこなかった人がいきなりそう言われると、すごく怖いと思います。でも、自分が認めたくない自分の方に実は自分の魅力がたくさんあって、旦那さんも子どももそっちのあなたが好きなんだよ、と言っています。

それを、認めなくてもかまわないんです。でも、認めないで心から楽しそうにしている人は、あまり見たことがないですね」

ばなな先生の言葉は人によっては刺激が強いかもしれませんが、真理をズバッとついてきます。そこも、ありスクに人が集まる理由なのでしょう。

筆者にも心当たりがありますが、自分を幸せにすることよりも、他人からどう見られるかばかりを気にしている人生は、心の休まる時がないように思えます。

そんな時、自分への問いかけとして、「それってあなたを幸せにするの?」というマジッククエスチョンは、自分らしくあるために有効なのではないでしょうか。

どっちでもいい

ばなな先生のお話を聞いているうちに、先日、ネットで賛否両論を巻き起こした絵本作家によるママについての歌の歌詞を思い出しました。

ママになる前はヒールをはいたり、ライブに行ったりしていたけれど、もうママだから走りやすい靴にして、ライブには行かないの。カレーは子ども用の甘いカレーで我慢するの。

こういった内容の歌詞です。

たしかに今の時代、ママとして生きることは、ラクではありません。それは、実家が遠かろうが、夫が協力的であろうが、程度の差はあれ、やはり大変です。

ですが、あの歌詞は、大変なことを大変と言っているだけで、子どもに出会えたからチャラというオチに、時代を逆行させるような意図を感じました。

個人的には、後の世代にはもっと楽しい子育てをしてもらいたいと思っているので、大変なことをひねりもなしに大変とはあまり言いたくありません。

ただ、あの歌詞を読んだ後に「私、ママだけど、ライブに行くし、隠れてお菓子食べるし」とわざわざ言いたくなる気持ちが芽生えた時、「ママはこうでなくてはいけない」という縛りが、自分の中に抗いつつもまだまだあるのだな、ということに気づかされました。

この話をばなな先生にしたところ、「僕は、どっちでもいいと思っています」という答えが返ってきました。

どっちでもいい。自分は我慢して、好きなおかずを子どもにあげてもいいし、もうないよと黙って後で食べてもいい。

どっちも自分で、良くも悪くもない。

それが今のあなただから、それでいいんだ。無責任な肯定ではなく、その人の存在を信頼しているからこそ生まれる言葉で、突き詰めると、子どもがママから一番言ってほしい言葉なのだと、ばなな先生は言っていました。

これは新鮮でした。そんなことを言ってくれた育児書は、今までにないような気がします。

やり方より、あり方の時代

ばなな先生は、あと数年で、ママというポジションがガラッと変わるだろうと言われています。
どう変わるのでしょうか。

ばなな先生「今、ベクトルとしては、子どもを産んでもキレイになろうとか、好きなことやろうっていう動きがうわーっと出てきていますよね。自分を愛そうムーブメントというか。

そういうキラキラした、ある意味振り切った極と、反対の極には、前時代的な、ママになったら我慢するべきだ、みたいな層があって、その中間に、普通のママ業を楽しくやっている人がいる感じですかね。それが数年すると、ならされて真ん中がスタンダードになっていくんじゃないかな、と」

ありスクで育てているのは、その中間の層ということでしょうか。

ばなな先生「そうですね。で、カギになってくるのは、結局、自分が普段いるコミュニティだとか、毎日顔を合わせているパートナーとの関係になっていきますよね。そこを見つめ直していくと、家庭や地域社会で“かかりの時間”が始まるんです。お互いがしたいことをして、自分と相手を尊重していく場です。その中心には、我が子に“それでいい”って言える母性を持ったママがいるんです。

で、見つめ直すには、こうすればこうなる、という“やり方”ではなく、自分がどうあるか、“あり方”が重要になっていくんです。これからは“あり方“が主流になってくると思いますよ」

そうは言っても、どうしてもありのままでいていいんだと思えるママは、まだまだ少ないように思うのですが、とお聞きしたところ、

ばなな先生「子どもが、今日友達にこんな悪口言われちゃったー、とかママに言うとしますよね。そこで方法論を与えたがるママは多いですね。子どもは甘えたいだけなんです。ママは、無視すればいいのよ、とか解決方法を言いたがるんですが、子どもが本当にほしいのは、ああそうだったの、つらかったねえ、よしよしっていう共感だったり、甘えさせてもらいたいだけだったりするんですが、それがわからない人は多いですね。

だまされたと思って甘えさせてください。ただ一緒に泣いてあげてください。ご自身に気づきが生まれますから。あー、甘えたかったのは私なんだって」

ママは、どーんと構えていればいいってことなのでしょうか。

ばなな先生「そうですよ!ぼく、お母さんになりたかったんですよ。教室で子どもにまちがって“お母さん”って呼ばれると、嬉しかったものです。一日何百回もママ・お母さんと呼ばれる皆さんが、うらやましくて仕方ないんです。

どうぞ、皆さんのままでママをやってください。うまくいかなくても、完璧じゃなくても、いいんですよ」

そう言ってばなな先生は朗らかに笑いました。

まとめ

現代では、子育てにかぎらず、答えやルールをつい探してしまう人は多いと感じます。

そのために、どこかきゅうくつで、自分らしさを失っている感覚は誰にもありますよね。

自分らしさすら忘れてしまいそうな時は、ためしにばなな先生の言われるように、小学校3、4年生の時の自分ってどんなだっただろう、と思い出してみてはいかがでしょうか。

ばなな先生の「あなたのままでそれでいい」お話会が、来る3月11日に、横浜市技能会館で開催されます。参加者には、完成したばかりの同タイトルの小冊子もプレゼントの特典がつくそうです。詳しくはfacebookのページをご覧ください。

【取材協力】ばなな先生
よかよか学院校長。二児の父親。
小学校教師をしているうちに、教室に入ってくる子どもの感情やあり方に気づくことが出来ることがわかり、つい授業が脱線してしまうようになる。

子どもが自分を好きになる魔法の授業「自分科」を考案する。
実践していく中で、子どもがママに承認されたいことを知る。さらに、ママの自尊感情が低いことを知り、それならママに「自分科」をやろうと、よかよか学院の『あり方スクール』を始める。

「小学校3、4年生があなた本来のあり方」と提唱し、大人たちに小学校の忘れ物を取りに行かせようと、各種講座お話会、執筆活動をしている。

よかよか学院 にアクセスすると「かかりの時間」がPDFで読めます。