デジタルビデオカメラ(DVC)の停滞が続いている。今年2月以降、販売台数は8か月連続して前年を割り込み、年間最大の需要期となる9月も厳しい落ち込みとなった。需要の一巡と、スマートフォンやデジカメが装備する付加機能との競合が、微妙に影響をおよぼしつつあるもよう。動画撮影の専用機としての優位性をどう訴求していくのか、DVCの存在感を高めるうえでポイントになるのは間違いないだろう。

DVCはフルHD対応が一般化するなど高機能、高性能化がすすみつつある。特に軽量化は顕著で、コンパクトデジカメにも匹敵する200-300g台のモデルが主流となりはじめた。参入メーカーは20社を超えるが、市場をけん引するのはソニー、パナソニック、JVCケンウッドの3社。合計シェアは9割前後に達し、3社による寡占が色濃く現れる市場となっている。各社とも毎年早々に新モデルを投入するのが一般的。年末年始に在庫処分がすすむことから平均単価は1月に底を迎え、新モデルが出揃うにつれて単価は上昇、2-3月にピークを記録する傾向にある。

DVCの需要が高まるのは例年9月。運動会や学芸会など園児や児童に絡む行事が多いこと、そして秋の行楽シーズンを迎えることが大きな要因となっている。2010年9月のDVCの販売実績を「100」とした台数指数でみると、11年9月は「106.2」、12年9月は「109.3」と好調に推移したが、今年9月は「78.5」と一転して精彩を欠いた。需要期だけでなく平月時でもDVCの売れ行きは停滞したままで、2月以降は8か月連続して前年を割り込み、この9月は71.8%と厳しい落ち込みとなった(図表1)。市況が停滞するなかで強みを発揮しているのがソニーで、圧倒的な売れ行きを誇るのがHandycam「HDR-CX430V」だ。4月に売れ筋トップに君臨して以降、6か月連続で首位の座を維持するほどの人気ぶりで、9月はこの単一モデルの販売台数が市場全体の2割弱を占めるほど躍進を遂げている。こうした人気モデルが存在するとはいえ、市場全体でみると冷え込みが続いている。

DVC市場の停滞は、内閣府が毎年3月に公表する世帯普及率からも読み取れる。大半をDVCが占めるとみられるビデオカメラの今年の普及率は一般世帯が41.5%、単身世帯では9.4%と、ここ数年数値の固定化が続いている。100世帯あたりの台数も今年は一般世帯が45.6台、単身世帯は10.4台で、ここでも動きはない。こうした点から、DVCは需要の一巡による飽和状態にあることを示唆している、とみていいだろう(図表2)。

実はBCNが8月に実施した動画撮影機器に関するアンケート調査からも、これに符号する結果がでている。具体的には、動画撮影でDVCとスマートフォンを併用する回答者の利用状況の変化だ。併用者の撮影回数を比較すると、DVCのほうが「増えた」とする回答は1割にも届かず、逆に「低下した」が4割にも達した。消費者の意識がDVCからスマートフォンへとシフト。スマートフォンがDVCの領域を浸食しつつあることを示すものとなった。

もうひとつ、この調査で明らかとなったのは、DVCと子供を持つ親との関係が鮮明化した点。PCやデジカメ、スマートフォン、タブレットなどの所有率は「子供がいる回答者」と「子供はいない回答者」で差はないに等しい。しかし、DVCでは両者の差は大きく、前者は所有率が6割を超えているのに対して、後者はわずか2割にとどまっているのだ。利用目的は前者が「子供の成長記録」や「子供のイベントの撮影」ときわめて明確だが、後者ではこうした明瞭な目的意識はないことが差を生む要因とみるべきだろう。

こうした点から、DVCの存在感を高めるためにも専用機としての優位性をいかに訴求していくかがポイントとなるほか、単身世帯などDVCと距離のある層にキャッチアップするためにも個々に即した利用提案が必要不可欠となりそうだ。(中村重行)

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